2020 Fiscal Year Research-status Report
SOX2によるリボソームRNA転写調節を介した分化多能性維持機構の解析
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20K06489
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中川 武弥 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (50363502)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | SOX2 / リボソームRNA / TBP / 細胞分化 / 多能性維持 |
Outline of Annual Research Achievements |
SOX2は胚性幹細胞の多能性維持に重要な転写因子である。SOX2による標的遺伝子の転写調節によっていかにして多能性が維持されているかを理解することは、個体発生時における細胞分化メカニズムのより詳細な理解へとつながり、その結果は再生医療分野への貢献が期待される。ES細胞ではリボソームRNAの転写が活発であり、その結果リボソームでのタンパク質合成が促進されている。そしてES細胞が分化を開始する際には、リボソームRNAの転写抑制が必要とされている。この様にリボソームRNAの転写調節は細胞分化制御に大きな影響を与えている。我々が発見したSOX2新奇複合体の構成因子はリボソームRNA転写調節領域に結合することから、この複合体のリボソームRNA転写制御への関与が示唆される。本研究課題ではSOX2複合体がリボソームRNA転写に与える影響を解析し、その制御メカニズムの解明を目指している。2020年度はマウスES細胞を用いて、SOX2新奇複合体の構成因子であるSOX2とTBPのタンパク質量をsiRNA処理により低下させた際の影響を、RT-PCR法とクロマチン免疫沈降法(ChIP assay)で解析した。RT-PCR法の結果から、SOX2とTBPのタンパク質量減少に伴いリボソームRNAの量が減少することが明らかになった。この結果はSOX2複合体が細胞内においてリボソームRNA合成を促進することを示唆する。ChIP assayの結果からは、SOX2とTBPが協調することによってリボソームRNAの合成を調節する領域に結合していることが明らかになった。以上の結果により、リボソームRNA合成に対するSOX2とTBPを含む複合体の重要性を確認する事ができた。これにより当該SOX2複合体の解析を進めることが、細胞分化制御機構の理解において意義あるものであることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度に予定していた3つの課題のうち、2つは期待通りの結果を得ることができた。残りの1つに関しては2021年度に引き継ぐこととしている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の予定通り研究を進める。SOX2とTBPの結合を阻害する変異体を作製し、この二つの因子が直接結合したうえで協調して働くことの重要性を確認する。また、TBP以外にも複合体構成因子の候補が見つかっている。それらに関してもSOX2との結合性の確認、ゲノム上の結合部位と標的遺伝子の決定を進める予定である。
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Causes of Carryover |
74円と少額であるため有効な使用方法がなく使用することを控えた。翌年の計画に影響のない金額であるので、当初の予定通り計画を進め消耗品購入費の一部として使用する。
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