2020 Fiscal Year Research-status Report
出芽酵母のイントロン含有tRNA（Ic-tRNA）が支えるリボソーム関連品質管理
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20K06491
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| Research Institution | University of Hyogo |
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Principal Investigator |
林 紗千子 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 特任助教 (40791869)
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| Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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| Keywords | tRNA / イントロン / リボソーム / 翻訳 / 酵母 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自然界に広く存在するものの未だ定かでないIc-tRNAの生物学的意義を、出芽酵母を例にリボソームの質的制御の観点から解明する。10種のtRNAイントロン欠失株の中でも、特に多くのリボソーム生合成異常を確認しているtLeu(CAA)Δint株に関し、2020年度は、まずはさまざまな翻訳阻害剤に対する感受性を調べることで、本研究課題で計画しているrRNAやリボソームの機能性についての詳細解析を速やかに進めるための情報確認・整理から始めた。その結果、同じ40Sの18S rRNA h44に結合するものの、塩基レベルでは結合部位が若干異なるパラモマイシンとハイグロマイシンBでは、tLeu(CAA)Δint株の生育に異なる影響を示すことが判明した。また、60SのE部位に結合するシクロヘキシミドも、顕著にtLeu(CAA)Δint株の生育を阻害することが分かった。興味深いことに、シクロヘキシミドに対する感受性の高まりは、リボソーム関連品質管理機構（RQC）経路で働くAsc1pなどの欠失によっても生じることが知られる。これまでの解析から、tLeu(CAA)Δint株では発現量に大きな変化はないものの、一部でAsc1pを欠くリボソームが産生されている可能性が浮上していた。そこで、Asc1pが主に機能するRQCのきっかけとなる翻訳中のリボソーム停滞について、GFP遺伝子とFLAG-HIS3遺伝子との間にArgまたはLysコドンの繰り返しを含むレポータープラスミドを用い、野生株及びLeu(CAA)Δint株での解析を進めた。その結果、通常、負電荷のリボソームトンネルと正電荷の新生鎖の相互作用により生じるはずのリボソーム停滞がtLeu(CAA)Δint株では抑制され、レポータータンパク質の翻訳が継続される傾向にあることが分かった。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、tL(CAA)Δint株で生じているリボソームの質的変化による影響を、該当Leu(UUG)コドンの繰り返しを含む翻訳に想定していた。またrRNAに異常を持つリボソームは、通常、18S NRDなどにより積極的に排除されることから18S NRD関連因子を欠いた変異株条件下など、何らかの方法で異常リボソームの蓄積を促した場合にのみ、tL(CAA)Δint株での翻訳異常を検知できると考えていた。ところが実際は、通常条件下で該当Leu(UUG)コドンの繰り返しを含む翻訳よりも、正電荷の新生ペプチド鎖が連なって合成されるArgやLysコドンの繰り返しを含む翻訳において、tL(CAA)Δint株での顕著な翻訳異常が確認されることとなった。よって、結果としては当初の研究計画を随時、得られた実験結果に照らし合わせ、方向修正しながら本研究を進めることとなったが、内容は本研究の目的である「Ic-tRNAがリボソームの質的・機能制御を通して翻訳環境を維持していることを明らかにする」に十分合致しており、むしろRQCとの直接的な関連も見出すことができたことから、研究は順調に進展したと考える。
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| Strategy for Future Research Activity |
本年の研究結果をもとに、tL(CAA)Δint株で産生されるリボソームの構成成分や性質についてより詳細に探る。そして、tRNA-Leu(CAA)イントロンの有無による新生ペプチド鎖の電荷に由来する翻訳異常の感知に働くリボソームの機能性を保証する分子機構の解明にも繋げて行きたい。
具体的には、薬剤感受性の結果やRQCに関する多くの知見等から示唆される特定のrRNAや個々のリボソームタンパク質について、修飾・発現変化などの解析を進める。さらに並行して、個々のRQC関連因子とtL(CAA)Δint株との多重変異株等を作出、遺伝学的・生化学的手法を中心とした研究を展開する。また既にtL(CAA)Δint株で行ったリボソームプロファイリング及びRNA-seqに関するデータの再解析を実施し、tL(CAA)Δint株での新たな翻訳異常に関する情報を収集、網羅的な遺伝子発現における影響も含め吟味するつもりである。
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| Causes of Carryover |
本年度はコロナウイルスの蔓延により学会参加が全てオンラインとなり、旅費が不要となったことで物品費等に使用できる経費に余裕が生じた一方で、緊急事態宣言等による行動制限から計画通りに実験や解析を行うことが出来ず、物品費等による出費も抑えられることとなった。また当初は本年度に投稿予定であった論文作成にも支障が生じ、次年度に投稿を延期している状況にある。そのため、200,000円分を次年度にまわすことで、投稿が延期されてしまった学術論文の論文投稿料及び英文校閲費等に使用したいと考えている。
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