2020 Fiscal Year Research-status Report
神経細胞分化過程のヒストンセロトニン化の動態を可視化する蛍光プローブの開発
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20K06499
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐々木 和樹 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (10415169)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヒストンセロトニン化 / 蛍光プローブ / TGM2 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年に新規ヒストン修飾であるセロトニン化が報告され、セロトニンが神経伝達物質としての機能以外に、神経細胞の遺伝子発現制御と分化誘導に関与していることが初めて示されたが、その詳細についてはまだ知られていない。そこでヒストンセロトニン化をリアルタイムに検出するための蛍光プローブの開発を行い、神経細胞の細胞応答に伴うヒストンセロトニン化の変動を観察する。蛍光プローブ作製にはセロトニン化ヒストンを認識する必要があり、そのためにセロトニン化ヒストンと結合する蛋白質を見つける必要がある。TFIID複合体が、セロトニン化ヒストンH3ペプチドと結合することが示されていたため、このTFIID複合体を構成する蛋白質のクローニングを行った。ペプチドプルダウンアッセイを行った結果、TAF3のPHDドメインがトリメチル化H3K4セロトニン化H3Q5(H3K4me3Q5ser)と直接結合することがわかった。セロトニンは神経伝達物質との役割の他に、トランスグルタミナーゼ2(TGM2)によるアミド基転移によって、細胞内のヒストンH3Q5のグルタミンと共有結合することが報告されているため、mCherry-TGM2融合蛋白質を作製し、mCherry-TGM2過剰発現細胞株を作製した。今後、TAF3のPHDドメインを用いてヒストンH3K4me3Q5serに応答する蛍光プローブ候補を作製し、TGM2過剰発現細胞を用いて、セロトニン処理による蛍光プローブの応答を調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
セロトニン化H3と結合するTFIID複合体の中から、TAF2、TAF6、TAF7、TAF9、TAF9B、TAF10、TAF11、TAF12、TAF13、TAF3のPHDドメインをクローニングし、Hisタグと蛍光タンパク質Venusを融合させた蛋白質を作製した。この中からビオチン化したH3、H3K4me3、H3Q5ser、H3K4me3Q5serペプチドを用いてペプチドプルダウンアッセイを行ったところ、TAF3のPHDドメインがH3K4me3Q5serと結合することがわかった。本年度までにH3K4me3Q5serと結合する蛋白質を見つけた後、ヒストンH3K4me3Q5serに応答する蛍光プローブ候補を作製する予定であったが、covid-19の影響でセロトニン化ヒストンH3のペプチド合成を行う予定であった理研内の支援ユニットが閉鎖されてしまったため遅延が生じており、H3K4me3Q5serと結合する蛋白質を見つけるところまでしか進んでいない。ヒストンH3Q5のセロトニン化酵素であるTGM2を過剰発現させた細胞を作製するために、His×6-mCherry-TGM2をつくり、FACSを用いてHis×6-mCherry-TGM2を定常的に過剰発現する293T細胞、HeLaS3細胞、neuro2a細胞を分取した。His×6-mCherry-TGM2発現neuro2a細胞で、5 mMセロトニン処理により、ヒストンH3K4me3Q5serが上昇することを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒストンH3K4me3Q5serに応答する蛍光プローブの作製を行う。H3K4me3Q5serとH3Q5serそれぞれに結合する蛋白質を見つける予定だったが、ペプチドプルダウンアッセイの結果、H3K4m3Q5serと結合する蛋白質を見つけられたため、今後はH3K4me3Q5serの蛍光プローブの作製を行っていく。H3とTAF3のPHDドメインの順やリンカーの長さを最適化するために、様々な蛍光プローブの候補を作製し、FRET変化が最大になる蛍光プローブを見つける。神経細胞株neuro-2aで5-HT処理によるヒストンH3K4me3Q5serの上昇がみられたため、この細胞に蛍光プローブを発現させ細胞内での応答を検出する。蛍光プローブ内のH3Q5をアラニンに置換し、蛍光プローブの応答がセロトニン化特異的に起こっているかを確認する。作製した蛍光プローブがクロマチンに取り込まれているか調べ、さらにMicrococcal Nuclease処理により蛍光プローブを定常的に発現している細胞が、正常にクロマチン構造を形成しているか調べる。神経細胞分化誘導過程のヒストンH3セロトニン化の動態を観察する。蛍光プローブを発現した神経細胞を分化誘導培地に交換することでセロトニンニューロンに分化させた際の蛍光プローブの応答を観察する。
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Causes of Carryover |
ヒストン修飾を阻害する化合物の酵素特異性を調べるためにパネルアッセイを外注したが、全てに阻害活性が見られなかったため、実験条件を検討し、再度、パネルアッセイの外注を3月中旬に依頼したが、納期が4月中旬であったため、次年度使用額が生じた。
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