2021 Fiscal Year Research-status Report
神経細胞分化過程のヒストンセロトニン化の動態を可視化する蛍光プローブの開発
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20K06499
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐々木 和樹 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 上級研究員 (10415169)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヒストン修飾 / 蛍光プローブ / FRET / ヒストンセロトニン化 / ヒストンクロトニル化 / YEATSドメイン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、従来のヒストン修飾とは異なる新たなヒストン翻訳後修飾が続々と見つかってきている。その中でも、ヒストンH3の5番目のグルタミンのセロトニン化は、セロトニンの神経伝達物質としての機能以外に、神経細胞の遺伝子発現制御と分化誘導に関与していることが示された。しかし、その詳細についてはまだ知られていないため、ヒストンセロトニン化をリアルタイムに検出するために蛍光プローブの開発を行い、神経細胞の細胞応答に伴うヒストンセロトニン化の変動を観察する。ヒストンセロトニン化に伴って蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が変化する蛍光プローブの作製には、セロトニン化ヒストンと結合する蛋白質を見つける必要があるため、ペプチドプルダウンアッセイを行った結果、TAF3のPHDドメイン及びWDR5がトリメチル化H3K4セロトニン化H3Q5(H3K4me3Q5ser)と直接結合することがわかった。これらの蛋白質を用いてヒストンH3K4me3Q5serに応答する蛍光プローブ候補のプラスミドを作製している。 他の新規ヒストン修飾であるヒストンクロトニル化を検出する蛍光プローブの開発も並行して進めている。YEATSドメインをもつAF9、GAS41、ENL、YEATS2は、アセチル化ヒストン及びクロトニル化ヒストンと高い親和性を持つことが知られている。これらのYEATSドメインを持つ蛋白質を用いて蛍光プローブ候補を作製した。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤トリコスタチンA(TSA)を用いてヒストンアセチル化を指標に、作製した候補の中から蛍光プローブの検討を行った。GAS41とAF9のYEATSドメインを用いた蛍光プローブが、ヒストンH3のアセチル化によるFRET変化を起こすことがわかった。作製した蛍光プローブを用いて、YEATSドメインを標的とした抗癌剤が細胞内で機能するかを調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セロトニン化H3と結合するTFIID複合体の中のTAF3のPHDドメインがH3K4me3Q5serと結合することがわかった。本年度、TAF3のPHDドメインより強くにH3K4me3Q5serと結合するWDR5の報告があり、Hisx6-Venus-WDR5蛋白質を作製し、ペプチドプルダウンアッセイを行ったところヒストンH3K4me3Q5serと強力に結合することがわかった。現在、WDR5とTAF3PHDドメインを用いた蛍光プローブ候補のサブクローニングを行っている。 同時に、新規ヒストン修飾であるクロトニル化と結合するYEATSドメインを用いた蛍光プローブの作製も行った。YEATSドメインはクロトニル化ヒストンと同時にアセチル化ヒストンとも結合するため、アセチル化を指標に蛍光プローブの作製を行った。YEATSドメインを持つAF9、GAS41、ENL、YEATS2のうち、AF9とGAS41がアセチル化ヒストンH3と結合することがプルダウンアッセイによってわかった。この2つ蛋白質のYEATSドメインを用いて蛍光プローブの候補をサブクローニングし、HeLaS3細胞に発現させTSAに対する応答でスクリーニングしたところ、GAS41のYEATSドメインを用いた蛍光プローブは、ヒストンH3のアセチル化に伴いFRETが減少する方向に構造変化することがわかり、さらにAF9のYEATSドメインを用いた蛍光プローブでは、ヒストンH3のアセチル化に伴いFRETが上昇する方向に構造変化することがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新規ヒストン修飾を検出する蛍光プローブの作製を行う。H3K4me3Q5serに応答する蛍光プローブの作製では、TAF3のPHDドメインとWDR5でどちらがヒストンH3Q5セロトニン化に対する蛍光プローブに最適か調べる。5-HT処理するとヒストンH3K4me3Q5serが上昇する細胞は確立しているため、この細胞に蛍光プローブを発現させ、5-HTの応答を比較することで最適な蛍光プローブを探す。蛍光プローブ内のH3Q5をアラニンに置換し、蛍光プローブの応答がセロトニン化特異的に起こっているかを確認する。作製した蛍光プローブがクロマチンに取り込まれているか調べ、さらにMicrococcal Nuclease処理により蛍光プローブを定常的に発現している細胞が、正常にクロマチン構造を形成しているか調べる。神経細胞分化誘導過程のヒストンH3セロトニン化の動態を観察する。蛍光プローブを発現した神経細胞を分化誘導培地に交換することでセロトニンニューロンに分化させた際の蛍光プローブの応答を観察する。 YEATSドメインを持つ蛋白質は、近年見つかった新規アシル化ヒストン結合蛋白質であり、染色体の転座により生じるMLLとのキメラ蛋白質が、急性白血病の原因のひとつであると考えられている。その中でもGAS41は白血病や肺がんなどに関与しているとの報告があり、そのためGAS41のYEATSドメインの阻害剤は抗癌剤の候補となるため、作製した蛍光プローブを用いてYEATSドメイン阻害剤候補が、細胞内で機能するか調べる。
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Causes of Carryover |
新規ヒストン修飾であるヒストンクロトニル化の蛍光プローブの作製に着手したため、ヒストンクロトニル化ペプチドを購入しようとしたが、今年度の納期に間に合わず次年度に繰り越した。 焦点深度の深い対物レンズを購入予定だったが、納期未定となってしまい今年度の購入することができず、次年度に繰り越した。後は計画通り使用する予定である。
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