2020 Fiscal Year Research-status Report
エクソソーム局在性膜タンパク質EAAC1およびCD63の構造解析
Project/Area Number |
20K06515
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
浜口 祐 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 研究員 (00587876)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | グルタミン酸輸送体 / クライオ電子顕微鏡 / 単粒子解析 / テトラスパニン / 膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子構造解析では技術革新が目覚ましく,比較的小さな膜タンパク質の構造解析あるいはX染結晶構造解析に迫る1Å台前半での構造解析が可能となりつつある.本課題ではエクソソーム局在性膜タンパク質の構造解析を行い,疾患への関連を明らかにする. エクソソームは細胞が自ら生み出す分身であり,離れた細胞どうしのコミュニケーションを可能とするツールの1つと考えられ,癌や神経変性疾患など様々な病態の進展に関与しているとされている.エクソソームには産生元の細胞に由来するタンパク質,ヌクレオチドなどが多く含まれいる.このうち,膜タンパク質である興奮性グルタミン酸輸送体(EAAC1)およびテトラスパニン(CD63)はてんかんやアルツハイマーといった神経変性疾患への関与があげられており,構造解析がもたらす情報は重要である.これら膜タンパク質について高分解能構造解析を達成することで,病態の広がりが如何にして生じているのかという問いに1つの解を提供できる. 本年度はEAAC1およびCD63の動物細胞を用いた発現系の構築と最適化,可溶化条件の最適化,精製,電子顕微鏡構造解析の予備実験を進めてきた.また,精製タンパク質についてクライオ電子顕微鏡観察に向けた試料最適化についても検討した.これらと並行して,クライオ電子顕微鏡でのグリッド作成,データ収集の効率化に加えて電子線損傷を考慮した構造解析も同時に行い,構造解析スループットの向上と得られた構造の品質向上にも取り組んでいる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はEAAC1およびCD63の高発現系の構築と可溶化・精製について主に進めた.FLAGタグ結合タンパク質として発現させることで,効率的に精製することが可能であった.クライオ電子顕微鏡構造解析に適した溶液組成を見出し,解析可能なタンパク質濃度達成することが出来た.負染色電子顕微鏡法により粒子の均一性,単分散性を評価し,クライオ電子顕微鏡での構造解析に興じた.クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子構造解析では膜タンパク質を包埋した界面活性剤のミセルが多く観察でき,解析を進めている.二次元クラス分けの結果から,粒子は気相界面にて特定の配向をとりやすいことが示唆されたため,配向性の改善などを検討する必要があると考えられた.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果から,粒子の配向を溶液組成あるいはグリッドの作成法の工夫により改善を進める.また,必要に応じてモノクローナル抗体からFabを作製し,複合体として構造解析することでより高分解能の達成を目指す.
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Causes of Carryover |
本年度購入予定としていた解析用GPUサーバーについて,市場価格の変動もあり当初予定していたよりもかなり安く購入できたため,その分残る結果となった.
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