2021 Fiscal Year Research-status Report
NiFe型ヒドロゲナーゼの成熟化における一酸化炭素の輸送機構の解明
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20K06517
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Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
村木 則文 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 助教 (20723828)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヒドロゲナーゼ / 金属酵素 / 結晶構造解析 / 一酸化炭素 / 過渡的複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、NiFe型ヒドロゲナーゼの活性中心構築(成熟化)過程の解明に向けて、鉄錯体の形成に関わるHypC, HypD, HypXの過渡的な複合体構造の決定を目指している。 前年度はHypXによって生成された一酸化炭素を受け取る2つのタンパク質HypCとHypDの結晶構造解析に成功した。前年度に得られたHypCの結晶構造は非生理的なジスルフィド結合に伴う二量体を形成していた。そこで、今年度はチオール還元剤を含んだ溶液条件でHypCの結晶化条件を探索して、硫酸アンモニウムを沈殿剤とする条件で結晶を得た。X線回折測定と構造計算によって、HypC単量体の結晶構造を2.2 angstrom分解能で決定することができた。 一方、前年度に得られたHypDの結晶構造はC末端ドメインの温度因子が高く、信頼性の高い構造モデルの作成が困難だった (Rfree>0.27)。今年度、改めて試料調製とX線回折測定を行なった。構造精密化計算の結果、1.5 angstrom分解能 (精密化終了後のRfree: 0.20) で構造決定した。興味深いことに、前年度得られた構造と異なり、この構造ではC末端ドメインの温度因子は低く、側鎖の電子密度も明瞭だった。また、N末端領域や一部のループの構造にも違いが見られた。複数の結晶から得たデータを比較したところ、今年度測定した結晶の中にも、前年度と同様のC末端ドメインの温度因子が著しく高い構造が混在していた。このような構造の違いは、精製ロット、結晶化条件、結晶の形状、空間群、格子定数などから見分けることはできなかった。“同じタンパク質の同じ格子定数の結晶から得た構造は同じである”ことは広く受け入れられており、非常に稀な事例であると言えよう。 前年度につづき、HypC-HypD-HypX三者複合体の結晶化スクリーニングを継続しているが、結晶は得られていない。三者複合体試料については、結晶構造解析に並行して、X線小角散乱とクロスリンク質量分析を行なった。現在、データの解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度において、結晶が得られたが測定データに上述のような問題が指摘されたHypCとHypDについて、構造生物学的議論が可能なレベルの良質な結晶構造を得ることに成功した。今年度の成果によって、複合体構造計算の基礎となるHypC, HypD, HypXそれぞれの結晶構造が揃った。また、HypDについては、これまでに知られていなかった構造多形が発見された。生理的機能との関係性について理解するにはさらなる研究が必要であるが、結晶学的にも興味深い知見である。 HypC-HypD-HypX三者複合体の構造研究にも進展があった。X線小角散乱による溶液構造解析に取り組んだ。さらに、そのデータを補完するためのクロスリンク質量分析も行なった。それぞれ有意義なデータが得られている。当初の予定にあった三者複合体の結晶構造解析とは異なるアプローチであるが、本研究課題の目標とする過渡的な複合体の構造決定に向けてデータを蓄積している。 以上の点から、研究は進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度もHypC-HypD-HypX三者複合体の結晶化条件のスクリーニングに取り組む。これに並行して、HypC-HypD-HypX三者複合体の溶液構造について、すでに得られているX線小角散乱とクロスリンク質量分析の結果から三者複合体のモデル構築を進める。得られたモデルを基に相互作用面に変異を導入したタンパク質を調製する。変異タンパク質を用いた複合体のゲルろ過クロマトグラフィ解析や等温滴定型カロリメトリー(ITC)を用いた熱測定によって、相互作用部位を特定する。HypXを有する好気性細菌に由来するHypDに特徴的な構造があると予想される。HypDの生物種間の構造的差異についても実験的に検討したい。研究遂行にあたっての課題は複合体構造の妥当性である。得られた構造の確らしさを検証する実験に注力したい。それらのデータを合わせることで、過渡的なHypC-HypD-HypX三者複合体を介した金属錯体生合成について議論すると共に本研究をまとめる。
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Causes of Carryover |
理由は二つある。一つ目は現地開催が予定されていた国際学会が完全オンライン開催になったため、渡航費・滞在費が必要なくなり、参加費も減ったことである。二つ目は構造解析用のコンピュータを購入する予定だったが、半導体不足による納期の遅れやそれに伴う情報収集のため断念したことにある。結果的に予定していた機種とは異なるコンピュータを購入した。 次年度は複数の学会が現地開催される予定であり、すでに当該研究課題の成果発表を申し込んでいる。これらの旅費に使う他、昨年度と同様に研究課題遂行のための実験器具の修理や更新が必要になることも増えており、それらの費用に充てる。
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Research Products
(7 results)