2020 Fiscal Year Research-status Report
時分割X線結晶構造解析によるアクチンATP加水分解反応の活写
Project/Area Number |
20K06522
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
武田 修一 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任助教 (50509081)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アクチン / ATP加水分解 / 時分割結晶構造解析 / 細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
アクチン繊維は、ATP加水分解によってダイナミックに重合・脱重合を繰り返すことで、細胞運動の駆動力を産む。繊維中のアクチン分子は単量体とは異なるF(filament)型コンフォメーションを取り(Oda, Nature, 2009)、ATP加水分解はF型アクチンのみで起こる。近年のクライオ電子顕微鏡技術の発展によって、3.1オングストローム分解能のアクチン繊維構造が報告されている(Merino, Nat Struct Mol Biol, 2018; Chou, PNAS, 2019)。しかしこれらの“近原子分解能”構造では、加水分解反応の肝である水分子は同定できない。タンパク質中の水分子位置の判別にはX線結晶構造解析が適しているが、その不定長の繊維に会合する性質ゆえ、これまでアクチン繊維の単結晶化は不可能であった。申請者は最近アクチン結合タンパク質との共結晶化によって、F型アクチンの高分解能結晶構造を決定することに成功した。本研究ではこの系を用いて、時分割X線結晶構造解析法によってアクチンATP加水分解を結晶中で捉えることを目標とする。ATPは生体内で最も普遍的に利用されているエネルギー通貨であり、その加水分解反応機構の解明はアクチン研究分野に留まらず、物質代謝や核酸合成など、細胞内で起こるATPをエネルギー源とする化学反応全般を理解する上で非常に重要である。初年度においてはまず、ヌクレオチドフリーアクチン結晶の作成に成功し、さらにこの結晶に対してヌクレオチドのソーキング条件を検討した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究業績の概要に示したように、初年度において時分割X線結晶構造解析を行う上で必須であるヌクレオチドフリーアクチンの結晶化に成功した。アクチンはヌクレオチドに対する親和性が非常に高いため、ヌクレオチドの除去にはさまざまな工夫が必要となる。今回は先行実験の条件を改良することで、結晶中がらヌクレオチドをほぼ完全に除去することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の目標としてまずヌクレオチドソーキングの条件検討を行う。その上で結晶中でのATP加水分解が起こるのか、さらにその活性を検討する
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Causes of Carryover |
初年度の研究のうちタンパク質結晶化に関する実験が当初予定した以上に順調に進んだため、結晶化実験に関する消耗品の購入費が節約できた。またコロナ禍により学会等の出張費が必要なくなった。初年度計画分は次年度以降の出張費や論文出版費として使用する予定である
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