2020 Fiscal Year Research-status Report
種によって異なる低複雑性配列から液-液相分離の分子機構を読み解く
Project/Area Number |
20K06525
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大橋 祐美子 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(RPD) (10422669)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 液-液相分離 / 低複雑性配列 / 天然変性蛋白質 / Sup35 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内には、液-液相分離によって形成される液滴が無数に存在し、特定の生体分子が局所的に濃縮されている。液滴には多様な機能がある事が知られており、その制御メカニズムの解明は、今後の創薬に新たな展開をもたらす事が期待できる。これまでの研究で、液滴の形成に、蛋白質の「低複雑性配列」が主体的な役割を担っている事が明らかになっているが、液滴形成の詳細な分子機構は未解明である。本研究は、3種の異種酵母Saccharomyces cerevisiae(SC)、Kluyveromyces lactis(KL)、Candida albicans(CA)由来の翻訳終止因子Sup35のN末端天然変性領域(Sup35NM)を用い、そのアミノ酸配列と液滴形成特性から、液-液相分離のメカニズムの解明を目指すものである。 本研究で使用する3種酵母由来のSup35NMは2種類の低複雑性配列で構成されている。異種間の配列相同性は40%程度と低いものの、アミノ酸含有率は類似している。SCのSup35は細胞内及び試験管内で液滴形成する事が既に報告されているが、KL、CAのSup35については不明であった。一年目の研究では、リコンビナントKL-Sup35NM及びCA-Sup35NMを作成し、液滴形成を調べた。結果、KL-Sup35NM、CA-Sup35NM共に、クラウダ-のポリエチレングリコールの濃度に依存して液滴を形成する事が明らかとなり、液滴形成の性質が種を超えて保存されている事が分かった。また、液滴形成の温度依存性は、KL-/CA-Sup35NMがSC-Sup35NMより広範囲の温度で液滴を維持できる事を示唆していた。今後、様々な条件でのSC-/KL-/CA-Sup35の液滴形成の比較を行い、またアミノ酸置換体などを作成し、相分離特性の違いとアミノ酸配列の違いの関係を明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で使用する3種類の異種酵母Saccharomyces cerevisiae(SC)、Kluyveromyces lactis(KL)、Candida albicans(CA)由来のSup35NMのうち、SC-Sup35NMの相分離特性に関しては十分な進展が得られているが、比較対象であるKL-Sup35NM、CA-Sup35NMに関しては調べるべき点が多く残されており、期待通りには進まなかった。これは、想定外の感染症の蔓延により、研究活動が制限される期間があった事が最も大きな理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に引き続き、SC-Sup35NM、KL-Sup35NM、CA-Sup35NMの液-液相分離特性を調べ、その違いの有無を明確に示す。その結果から、必要に応じて変異体を作成し、詳細なメカニズムを明らかにしていく。また、アミノ酸配列とアミノ酸構成の大きく異なる分裂酵母S.pombe由来のSup35NMを比較対象として加える予定である。またこれらのSup35NMのC末端にシステインを導入した変異体を既に作成しており、システイン残基を蛍光ラベルしたものを用いて、液滴の融合や、液滴によって促進されるアミロイド形成の様子を観察する予定である。
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Causes of Carryover |
感染症の蔓延により、研究に遅れが生じたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、主に遅れの生じているCA-Sup35NM、KL-Sup35NMのリコンビナント蛋白質作成及び濁度測定の試薬や消耗品に使用する。
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Research Products
(4 results)