2022 Fiscal Year Research-status Report
非凍結結晶を用いた“in crystallo”酵素反応解析
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20K06530
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
村川 武志 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (90445990)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 秀行 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (00183913)
馬場 清喜 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 構造生物学推進室, 主幹研究員 (00437344)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トパキノン / HAG法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,HAG法(湿度調整と水溶性ポリマーのコーティングを用いたタンパク質結晶マウント法)を発展させ,温度やpHが正確に制御された環境下での結晶内の酵素反応を,X線結晶構造解析および結晶顕微分光により直接的に観察することを目的としている.研究試料として土壌細菌Arthrobacter globiformisに由来した銅アミン酸化酵素 (AGAO)を使用し,本酵素の補酵素であるトパキノン(TPQ)の生合成過程における,前駆体Tyr残基からTPQへの構造変化機構の解明を目指す. 補酵素TPQは,酸素および銅イオン存在下で,前駆体Tyr残基から自己触媒的に生成する.このため,まず我々は銅イオン非存在下で,大腸菌内にてAGAOを発現,精製し,本酵素の前駆体(Tyr型)結晶を作成した.得られた結晶を嫌気条件下で銅イオン溶液に浸漬後,SPring-8のビームラインに設置されたHAG装置にマウントした.この結晶への吹付け気流を窒素から酸素(空気)に切り替えることにより,結晶内でのTPQ形成反応を開始した.気流切り替え後,経時的に回折測定を行い反応を追跡したところ,結晶内で最終的にTPQが形成したことを確認できた.回折実験に並行し,ビームラインに設置されたオンライン型結晶顕微分光装置による測定も行った.結晶の厚み,および反応の進行度とTPQに由来する480 nmの吸収に良い相関関係が得られ,回折と分光をリンクさせた測定が可能となった.現在,詳細な解析を行っているが,構造変化についての重要な知見が得られ,我々がこれまでに提案した反応スキームをさらに拡張できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度,結晶化条件および測定条件などをほぼ固めることができたため,本年度より本格的な測定を始めた.すでに,結晶内で前駆体Tyr残基からTPQへの構造が大きく変化することを回折データおよび分光データから観察できた.
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Strategy for Future Research Activity |
令和三年度より本測定を開始しており,令和五年度はより踏み込んだ測定を行う.実験条件をより細かく振り,また,回折測定と分光測定をリンクさせ,より定量的な構造データを得る.
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Causes of Carryover |
令和四年度は研究費の節約に努めた結果,約100万円程度次年度に繰り越せた.これらは主に結晶調製用の試薬および測定施設(SPring-8)までの旅費に使用する予定である.
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