2021 Fiscal Year Research-status Report
選択励起パルスを用いる高感度多次元NMR測定法の開発と応用
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20K06533
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
葛西 卓磨 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (70446516)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 核磁気共鳴法 / 選択励起パルス / タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、核磁気共鳴(NMR)法においてタンパク質等の多次元相関スペクトルを測定する際、共鳴周波数(化学シフト)情報を得るためのパルスシーケンス中の待ち時間に磁化が緩和してしまうことを原因とする感度の低下を避けることを目的とする。方法としては、選択励起パルス等を用いて短い待ち時間で共鳴周波数の情報を磁化に付与することと、従来のような単純なフーリエ変換法では解析できなくなるためその情報を取り出すための新たな解析法を柱とする。この考え方と数学的に近い方法として、chemical exchange saturation transfer (CEST)測定において、照射磁場を化学シフト方向に一定間隔でスキャンするのではなく、化学シフトに応じて影響が異なるような選択的パルスを用いることで、複数の化学シフトを照射したときの影響を一度に調査し、単位測定時間当たりの感度を向上させることを目指す方法がある。いずれの方法であっても、どのように実験条件を選ぶかと、それらの測定結果をとりまとめてどのように解析し所望の情報を得るかが肝要である。本年度は、こうした考えのもと、上記2種類の方法のどちらにも応用できる実験条件選択・解析法として、ある時点までの実験結果を解析し、次の実験で得られるであろう情報量が大きくなるような実験条件を選ぶことで、重要な測定点に測定リソースを重点的に割いて単位時間当たりの感度を向上させる方法を開発した。手法としては、マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いたベイズ推定により毎回の測定ごとに事後確率を求め、それを次の測定の事前確率として用いることとした。シミュレーションの結果、少数のアミノ酸残基に集中して測定する条件では、従来法を上回るパフォーマンスを得ることができた。本法は、本研究開始時に想定していた応用範囲を超え、様々な測定法に応用できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の当初の目的にも、また他の種類の測定にも応用できる可能性がある実験条件選択・解析法の開発に軸足をシフトし、これまでのところ良好な結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、実験条件選択法、その解析法の開発およびシミュレーションによる評価をおこない、模擬試料による基礎的な実験評価をおこなった。来年度は、タンパク質試料を用いて本法の評価をおこなって問題点を洗い出し、さらに実用的な方法に進化させていく方針である。
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Causes of Carryover |
本年度はシミュレーションをもとにした手法開発に中心的に取り組み、実測定は本法の原理を検証するための基礎的なものにとどまったため、残額が生じた。次年度は本年度に開発した手法全体の実証をおこなう予定であるため、安定同位体標識試料調製費用がかかる見通しであり、本年度からの繰り越し分と翌年度分を合わせて使用する予定である。
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Research Products
(3 results)