2023 Fiscal Year Annual Research Report
カルシウムポンプとフリッパーゼ;触媒部位から輸送部位への構造変化の伝達機構
Project/Area Number |
20K06534
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
大保 貴嗣 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (90207267)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Caポンプ / EP / クライオ電子顕微鏡 / 一分子蛍光観察 / 脂質 / ポリアミン / ATP13A2 / パーキンソン病 |
Outline of Annual Research Achievements |
①Caポンプの輸送反応の鍵となるEP異性化/Ca輸送(Ca2E1P → Ca2E2P → E2P + 2Ca2+)では、細胞質ドメインのAドメインが大きく回転して細胞質領域が大きく配置を変え、構造変化が遠く離れたCa輸送部位に伝達されてCa放出の構造変化がおこる。Ca2E2Pの存在は未だ実証されていなかったが、最近筆者は部位特異的変異を用いてそれを単離することに世界で初めて成功した。しかし野生型でこのCa2E2Pを経由するかは全く不明であった。そこでAドメインの特異的部位を蛍光色素でラベルして一分子蛍光観察し、活きた酵素のEP分解過程でその動きをライブ検知し、E2PCa2相当の状態を経由することを示した。 ②CaポンプのM4のArg324側鎖が脂質頭部と相互作用し、反応段階に応じて結合相手を変える。そこで、特異的反応段階にてArg324が結合相手を変える意義を調べた。Arg324-Tyr122間の水素結合はE1からE1Ca2が形成する過程を促進し、Arg324-リン脂質間の結合はEP異性化に重要な役割を持つというArg324の多機能性を示ことができた。 ③細胞質ポリアミンは細胞の恒常性を維持する。ATP13A2は細胞質へのポリアミン輸送に関与し、その機能不全はアルツハイマー病やその他の神経分解疾患に関連する。本研究では、ヒトATP13A2のクライオ電顕により輸送サイクルに沿って中間体の原子構造を解明し、E2P加水分解・Pi遊離に伴なうポリアミン結合と輸送の構造変化、部位特異的変異の結果から輸送機構を明らかにした。ポリアミンは管腔トンネルで結合し、多数の静電およびπカチオン相互作用によって認識され、その幅広い特異性を説明できた。ATP13A2はパーキンソン病の原因遺伝子PARK9である。この反応機構の解明はパーキンソン病の遺伝的な原因探求と治療法の確立に貢献すると期待される。
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Research Products
(5 results)