2022 Fiscal Year Research-status Report
TGFβに応答する機能性cis-NATs群の生理・分子機構の解明
Project/Area Number |
20K06541
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
大畑 樹也 浜松医科大学, 医学部, 助教 (80616459)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | cis-NATs / EMT / TGFβ / Epigenetics / Program |
Outline of Annual Research Achievements |
TGFβ(Transforming Growth Factor β)は腫瘍抑制作用と腫瘍促進作用の二面性を持つ増殖因子である。このためTGFβの生理作用は多彩であり、増殖抑制作用、アポトーシス誘導、EMT(Epithelial-Mesenchymal transition, 上皮間葉転換)誘導などが知られる。EMTは正常発生、傷の治癒、がんの転移などに関わることが知られる。 cis-NATs(cis-Natural Antisense Transcripts)とは、センス鎖(パートナー遺伝子)と同じ領域から転写される逆方向の転写産物である。申請者はcis-NATsのパラダイムであるTsixの分子機構について独自の研究を進めてきた。Tsixの様に、一部のcis-NATsはそのパートナーの転写をエピジェネティックにかつ恒常的に抑制する潜在能力を持つと思われる。しかしながら、数多くのcis-NATsの潜在能力は依然不明なままである。 本提案では、TGFβ応答の研究領域とcis-NATsの研究領域を融合し、TGFβ応答遺伝子のcis-NATsを①体系的に探索・編纂し、その②生理的機能解明、および③分子機構解明を目標としている。 本年度は、TGFβ応答遺伝子のcis-NATsの体系的な探索・編纂を行うために、独自のプログラムCCIVRを開発した。独自のRNA-seq dataをCCIVR解析することにより、TGFβ応答し、さらに逆相関の発現パターンを示すcis-NATs群を網羅的に同定することに成功した。さらにqRT-PCRやChIP-PCR法を組み合わせ、それらcis-NATsの中でTsixと同様の発現制御機構を持つ複数のcis-NATs pairsを同定することに成功した。この成果を論文として報告した(Ohhata T et al., Sci Rep., 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、cis-NATsの体系的な探索・編纂を行うための独自のプログラムCCIVRをさらに発展させたCCIVR2を開発した。CCIVR2はcis-NATsだけではなく、転写開始点付近が隣接しているセンス・アンチセンスペアであるdivergent transcription pairや、転写物終結点付近が隣接しているセンス・アンチセンスペアであるconvergent transcription pairも同定することができる(これらのペアには領域が重なっていないnon-overlapping antisense transcriptsも含む)。CCIVR2はさらに、センス遺伝子の転写開始点/転写物終結点からの指定した範囲に存在するアンチセンス遺伝子を網羅的に同定し、アンチセンスペアの種類ごとに分類することもできる。 CCIVR2を使い、divergent transcription pairおよびconvergent transcription pairの進化的な保存性や種特異的な特徴を解析した。さらに、CCIVR2を用いることで、既知の機能が知られているdivergent transcription pairが単離できることを確認した。これらの成果を論文としてまとめ投稿が完了し、現在査読中である(Suzuki M et al., under review)。これは本研究が当初の計画(TGFβ応答遺伝子のcis-NATs解析)以上に広がりを見せていることを示しており、当初の計画以上に本研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
数多くのcis-NATsの潜在能力は依然不明なままである。また、divergent transcription, convergent transcriptionも、一部をのぞき、その生体内における機能については不明な点が多い。我々の開発したCCIVR(Ohhata T et al., Sci Rep., 2022)およびCCIVR2(Suzuki M et al., under review)は、は既報のRNA-seq dataから、網羅的にcis-NATs, divergent, convergent pairsを同定することができる。これを用いれば、疾患のRNA-seq dataから異常な発現変化を示すcis-NATs群や、発生・分化に関与するcis-NATs群の候補を網羅的に抽出することもできる。今後はこれらの方向性で研究の幅を広げるとともに、投稿中論文のリバイス実験を全力で取り込み、研究期間中の論文アクセプトを目指す。
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Causes of Carryover |
CCIVR2の開発とその追加実験のためにさらなる研究費が必要と判断した。現在投稿は終わっているが、リバイスのための実験を続けている。今年度に繰り越した費用については、追加実験のための消耗品に加え、実験補助員の雇用、英文校正費用、論文掲載費用、成果を発表するための学会参加費用などに使用する予定である。
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