2021 Fiscal Year Research-status Report
光依存型酵素をプラットフォームとした新奇光反応への機能変換
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20K06542
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 治樹 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (80615451)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 酵素デザイン / 光依存型酵素 / クロロフィル / 光合成細菌 / シアノバクテリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では光依存型protochlorophyllide還元酵素(LPOR)に変異を導入し、別の還元反応へ機能変換することを試みる。2020年にシアノバクテリア Shynechosystis sp PCC 6803株のLPORの立体構造が明らかにされ、その基質結合に関わる領域について新しい知見が得られた。この構造情報を元にLPOR上の基質 結合部位に特異的なアミノ酸残基変異導入を行い、本来の活性であるprotochlorophyllide還元反応とは異なる触媒反応を光依存的に進める酵素を創出すること を目指す。まず最初の機能返還のターゲットとして、LPORの本来の活性であるprotochlorophyllide還元活性の生成物、chlorophyllideに対してさらなる還元反 応を行うchlorophyllide還元酵素(COR)に着目する。CORとLPORは基質の構造が非常に類似している点、触媒する反応がともに炭素の二重結合の還元反応である点 など、触媒する反応の反応機構が近く、機能変換が最も起こりやすいと考えた。2021年度は実際にLPORにおける基質Pchlide結合領域にランダムな塩基置換変異を導入するライブラリの作成を行なった。そして調製したLPOR変異ライブラリの規模や、変異の導入率を評価し、そのライブラリを2020年度に確立した光合成細菌Rhodobacter capsulatusのCOR欠損株を用いて大規模なスクリーニングを実施した。これまで50,000種類以上の変異LPORをスクリーニングしたが、COR活性を相補する変異LPORは得られていない。これらの変異LPORライブラリにおいて元来の活性であるLPOR活性を維持するものについても光合成細菌のDPOR欠損株での相補を指標に評価したところ、導入されたアミノ酸変異の個数と活性の喪失には有意な相関が見られた。この評価によって、LPOR活性に重要なアミノ酸残基を網羅的に評価できる可能性があり、LPORの生化学的な解析への新しい手法としての期待もできる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度までに構築した光合成細菌Rhodobacter capsulatusのCOR欠損株を用いたin vivo相補により大規模なLPORライブラリからCOR活性を保持するものをスクリーニングする実験系を構築した。2021年度はランダムな塩基置換を含む変異LPORライブラリの作成およびその機能評価を中心に実施した。塩基置換をLPORの基質結合部位に特異的に導入するため、LPOR-Pchlide複合体の立体構造情報をもとに、Pchlideの結合に関わるとされるPchlide loopとHelix a10というドメインに着目した。これらの2つのドメインを構成するアミノ酸残基にランダムな置換変異を導入するため、ランダム塩基Nを複数含む縮合プライマーを用いたPCRにより塩基置換を導入したLPORライブラリを作成した。ランダム塩基を導入する箇所を絞ることで一つの変異ライブラリのサイズを30,000-50,000種類に調整し、全ての組み合わせをスクリーニング可能な範囲にし、 複数回の形質転換によりそれらの変異LPORライブラリを光合成細菌R. capsulatusのCOR欠損株およびDPOR欠損株へ導入した。COR欠損株のスクリーニングは光合成条件で行うことにより、変異型LPORによりCORの機能が相補された株の取得を試みているが、現在までのところそのような株は得られていない。DPOR欠損株を対象にした形質転換では、変異LPORライブラリにおける元来の活性であるLPOR活性の有無を評価した。LPOR活性が残存した変異LPORの配列と活性を喪失した変異LPORの配列を比較することで、LPORの活性に重要なアミノ酸残基について網羅的に検出する実験系として期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
変異LPORライブラリの作成については、変異導入箇所を絞ったいくつかのライブラリを順次調製してCOR活性の有無をスクリーニングで確認していく。また異なるライブラリを掛け合わせてさらに多様な種類の変異を含むLPORライブラリの調整も試みる。また基質Pchlideの配向性に着目して、その配向性が変化する可能性があるアミノ酸残基について部位特異的に変異の導入も検討する。具体的にはPchlideの非対称な側鎖の一つであるC17位のプロピオン酸の保持に関わる親水性アミノ酸(Thr145、Lys197)を疎水性のアミノ酸に置換することでプロピオン酸の空間的な位置を変化させることを目指す。またDPOR欠損株を用いたスクリーニングにより評価したLPORの変異と活性の関係を解析し、LPORの活性に必要なアミノ酸残基についても網羅的なデータを取得していく。
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Causes of Carryover |
初年度から続く新型コロナウイルス感染症の影響により、参加を予定していた会議が中止、延期またはオンライン開催となり、旅費として計上した予算が使用されなかった。また購入予定であったタンパク質精製用のFPLC装置は、タンパク質の精製が必要な段階には到達しなかったため、次年度以降に状況を勘案して購入を検討する。
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