2020 Fiscal Year Research-status Report
Functional analyses of chondroitin sulfate chains in bone remodeling and skeletal muscle plasticity
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20K06551
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
三上 雅久 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (20330425)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コンドロイチン硫酸 / 組織リモデリング / 骨粗鬆症 / 筋萎縮症 / 筋サテライト細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢化社会を迎えた本邦において、健康寿命の延伸は達成すべき重要な課題であり、その実現には自立性の低下を誘引する運動器症候群の克服が不可欠である。その代表的疾患である骨粗鬆症およびサルコペニア(加齢性筋肉減少症)の発症要因は、概して加齢に伴う組織リモデリング機構の破綻であると捉えることができるが、破綻を招く分子基盤の実体は不明である。これまでに申請者らは、細胞周囲の微細環境を形づくるコンドロイチン硫酸(CS)鎖が、骨・骨格筋・神経といった運動器を支える構成要素の分化・再生過程を調節する多機能糖鎖であることを明らかにしてきた。本研究では、CS鎖の発現が加齢に伴い減少することを踏まえ、「運動器全般の正常な組織リモデリング機構が機能的CS鎖の発現により担保されている」という仮説を実証すべく、骨および骨格筋を基軸にした運動器の組織リモデリング過程におけるCS鎖の役割と作用機序の包括的解明を目指し、本年度については、以下の成果を得た。 1)“CS-E”タイプのCS鎖による破骨細胞分化抑制の作用機序の解析:RANKL(分化誘導サイトカイン)誘導性の破骨細胞分化系を利用し、骨組織に多く存在するCS-E(高硫酸化CSバリアント)を介した破骨細胞分化抑制の作用点の絞り込みを行った。その結果、CS-Eの作用点は、分化初期段階のみならず、成熟後の段階にも存在することが示唆された。 2)骨格筋幹細胞である筋サテライト細胞に依存した骨格筋再生過程に影響を及ぼすCSサブタイプの役割とその作用機序の解析:骨格筋リモデリングにおけるCS鎖の構造-機能相関を明らかにする目的で、骨格筋におけるCS鎖の加齢性構造変化を調べた。その結果、加齢マウスの骨格筋に検出される特徴的なCS鎖を多く含む環境が、サテライト細胞プールの維持に適さない環境であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CS-Eによる破骨細胞分化抑制の作用点が複数に渡ることを見出すことができた。現在、各作用点における分子基盤の解析に移行しつつある。 また、骨格筋老化とCS鎖の構造変化との関連を調べたことで、筋サテライト細胞の分化や維持機構にCS鎖を含む微小環境が積極的に関与していることを支持する結果が得られたことは大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、CS-Eによる破骨細胞分化阻害の作用点の絞り込みや、筋サテライト細胞の制御にCS鎖の構造変化が積極的に関与する実験的証拠を得ることができたので、それぞれの推定作用点における分子メカニズムの解析を進めてゆく。 また、骨組織におけるCS-Eの分布が新生骨(類骨)と老朽化した古い骨を見分ける指標になるか検証するために、野生型およびCS-E合成酵素の欠損マウスから骨切片を作製し、種々の抗CS抗体の染色性から、骨切片上でのCS-Eの分布を確定すると共に、類骨面や骨吸収面の分布と比較検討する。 一方、骨格筋リモデリングにおける課題として、実験的筋損傷モデルマウスの再生途上筋を用いて、CS-A(骨格筋組織に豊富なCSサブタイプ)の一過的な発現低下に貢献する調節酵素や、筋再生に寄与するCSプロテオグリカンのコアタンパク質を同定し、CS-A依存的な骨格筋分化・再生制御の分子基盤の解明に繋がる知見を得る。
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Causes of Carryover |
研究はおおむね計画通りに進展しているが、コロナ禍の影響で一部着手に至っていない実験があったため、当初の見込み額と使用額に差が生じる結果となった。 全体的な研究計画に変更はなく、前年度の繰り越し分の研究費を含め、当初の予定通り研究課題の遂行してゆく。
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