2021 Fiscal Year Research-status Report
選択的オートファジーによるオルガネラ分解の機構と意義の解明
Project/Area Number |
20K06552
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
福田 智行 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (90415282)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オートファジー / オルガネラ / ミトコンドリア / マイトファジー / 分裂酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
オルガネラはそれぞれ特化した機能を果たすため、その質や量は厳密に制御される。その制御の1つとして、オルガネラは選択的なオートファジーにより分解される。選択的オートファジーでは、オルガネラの一部が隔離膜で包まれ、液胞へ輸送され、分解される。本研究はこうしたオルガネラ分解の機構や制御を明らかにすることを目的とする。 本年度は、分裂酵母の遺伝学的スクリーニングで得られた因子の中から、ミトコンドリアの選択的分解(マイトファジー)の際にレセプターとしてはたらき、隔離膜をミトコンドリアに安定化させるAtg43について詳細な解析を行った。泳動パターンからAtg43がリン酸化される可能性を見いだし、ホスファターゼ処理により、実際にリン酸化されていることを示した。Atg43のリン酸化は栄養増殖時にもみられるが、栄養飢餓によりさらに増強されていた。リン酸化箇所を同定するため、複数の組み合わせでセリン・スレオニン残基に変異を導入したAtg43を発現させた株を作製し、Atg43の泳動度を評価した。その結果、栄養増殖時に起きるリン酸化と、飢餓時に起きるリン酸化は異なる箇所で起きていることが示唆された。また、栄養増殖時のリン酸化は特定のセリン残基で生じるのに対し、飢餓時のリン酸化は複数のセリン残基でリダンダントに生じる可能性が示された。次に、リン酸化が生じることが予想されたセリン残基に変異を導入したAtg43を発現する株におけるマイトファジー活性を評価したところ、リン酸化の減少に比例してマイトファジーが低下していた。以上から、Atg43は栄養状況に依存してリン酸化による制御を受けること、このリン酸化はマイトファジーを促進すること、が明らかになった。リン酸化に関わるキナーゼや、リン酸化がAtg43の分子特性に与える影響を解析するための準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、因子探索で得られたタンパク質の特徴付けを行うことができた。分裂酵母のマイトファジーレセプターに相当するAtg43は、マイトファジーの誘導における時空間的制御や活性制御の鍵になると考えられる。前年度までの解析からAtg43の発現が飢餓によって誘導されることが分かっていたが、Atg43はミトコンドリア上に均一に存在しており、局所的に生じるマイトファジーを空間的にどのように誘導するかは不明であった。本年度の解析により、Atg43がリン酸化を受けること、リン酸化がマイトファジー活性に影響すること、が見出されたため、リン酸化がマイトファジー誘導の決定要因となる可能性が示された。したがって、今後の研究展開につながる成果が得られたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きAtg43に関する詳細な解析を行うとともに、オルガネラオートファジーに関与することが予想される他の因子についても同様の解析を行い、オルガネラオートファジーの制御や機構とその意義についてさらなる検証を進める。
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Causes of Carryover |
研究の進捗に応じて当初想定していた予算執行計画の一部を変更したため、未使用額が生じた。これは主に、Atg43に関する研究が著しく発展したため、他のオルガネラオートファジー因子に優先してAtg43の解析に注力したことによる。次年度は、Atg43とその他の因子の解析からオルガネラオートファジーの分子機序を明らかにすることを目的に、酵母細胞を用いた解析のための培地と消耗品、タンパク質解析用試薬、酵素やオリゴヌクレオチドを含むDNA解析用の試薬、成果を発表するための費用に助成金を使用する。
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