2020 Fiscal Year Research-status Report
宿主を感知した細菌が遺伝子発現を変化させ宿主と共存する仕組みとその意義
Project/Area Number |
20K06558
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
白土 明子 札幌医科大学, 医療人育成センター, 教授 (90303297)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 自然免疫 / 細菌 / 宿主共存 / 遺伝子発現 / 感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物が宿主内に侵入すると,宿主の特定の受容体が,微生物に固有の物質を認識して,細胞内情報経路を介して免疫の発動や微生物の毒性物質の解毒装置を働かせる。この時,微生物側にとって宿主内や宿主体液は大きな環境変化といえ,宿主内にいることを感知して遺伝子発現を変動させる。われわれはこれまでに,細菌表面の分子構造変化が宿主免疫の情報経路を抑制することや,宿主内で細菌の受容体経路が活性化して宿主の細菌攻撃物質を解毒すること,ウイルスが感染した培養液や動物体液が,マクロファージの貪食活性を亢進することを見出してきた。これらの事実から,宿主と微生物が遭遇すると,違いを認識して遺伝子発現と整理状態を変化させること,その総和が感染症の成り立ちや疾患の重篤さを規定すると考えることができる。これまでに,宿主侵入や宿主体液により活性化する大腸菌の受容体と転写因子の組み合わせを見つけ,その中から宿主傷害活性を亢進する経路,抑制する経路をそれぞれ見出してきている。 初年度は,これまでの成果に基づき,宿主体液で活性化し,宿主傷害毒性を抑制する経路に着目した。つまり,感染時に細菌毒性が高くなりすぎないように,自身の毒性を抑制する経路の存在を物質的に示すことを目指している。その結果,ある受容体経路で産生亢進するタンパク質の中に,自分自身には毒性はないが,新規の毒性物質の細菌内蓄積を制御する種類が含まれることがわかった。構造解析も行われているが,既知タンパク質との大きな類似性は見つからなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はコロナウイルス感染対策のため研究実施に制約があった。そのため,実験動物をもちいて飼育期間に伴う各種変化を調べることが困難であった。また,着任に伴い工事を行なってセットアップした機材や工作した器具類を用いて実験ができるようにしてきた。しかし,研究室が別建物に移転することとなり,その準備のために新たな建物へ再設置するため取り外しが必要となり,当該設備を用いる実験の実施に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
準備や実施が遅れた計画のうち,実験動物を用いた実験の実施環境を整える。また,いったん解体した実験機材の新環境での再設置や実験環境の最適化を移転後に速やかに行う。研究の遅れを取り戻すため,試薬類にはキット等効率良い物品の購入,必要に応じて実験の学内外への外注も考慮する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染予防対策のため,実施予定の実験の一部に制約があったため。 今後は,計画された実験を再開することにしており,利用予定の物品購入を行い研究を推進する。
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