2021 Fiscal Year Research-status Report
宿主を感知した細菌が遺伝子発現を変化させ宿主と共存する仕組みとその意義
Project/Area Number |
20K06558
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
白土 明子 札幌医科大学, 医療人育成センター, 教授 (90303297)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自然免疫 / 感染症 / 宿主共存 / 細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
宿主内に細菌が侵入すると,宿主の細菌物質特異的な受容体がこれを感知して,免疫の発動や微生物の毒性物質の無効化の仕組みを働かせる。細菌にとっても,宿主内へ移動することは環境の大きな変化といえ,宿主内の物質や物理化学的環境を感知して,遺伝子発現を変化させる。これまでの研究から,細菌の細胞壁や細胞膜などの構造変化が宿主免疫の情報経路を細胞レベルおよび液性レベルで抑制すること,細菌は宿主侵入にともなって受容体経路の一部の活性変化を起こし宿主の細菌攻撃性物質を分解すること,ウイルス感染した体液に免疫細胞活性化能が付与されることを明らかにしてきた。これらの成果より,微生物と宿主とが遭遇すると,お互いを認識して双方が遺伝子発現を変化させ,感染特有のタンパク質レパートリーを持つように変化し,その総和が感染症の病態を決定づけると考えることができる。 本研究ではこれまでに,宿主の体液によって活性化する受容体経路のうち,宿主への傷害活性に抑制的に働く種類を見出し,この経路に着目してきた。すなわち,感染時に毒性が強いと,細菌は生きるが宿主が死んでしまうため,細菌は宿主が死なないよう調節する抑制性の情報経路を持つと考え,その物質的な証明を目指してきている。すでに,ある細菌受容体経路の制御で発現亢進するタンパク質群の中に,自身に毒性はないが,未知の宿主毒性活性の細菌内部の蓄積を抑制すると考えられる種類を見出している。今年度は,上述した宿主毒性を担う新たな物質の分離精製に着手した。各種のクロマトグラフィーを駆使して,毒性活性を担う物質の部分精製に成功した。この物質は脂質化されうるタンパク質と考えられた。さらに,部分精製タンパク質画分は,生菌と同等の宿主傷害活性を有すことがわかったが,顕著な炎症所見や液性免疫応答の誘導は確認できず,既知の物質との毒性発揮機構が異なる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,予定された実験が行われた。一部,実験条件の最適化に時間を要し,解析途上のものも残るが,全体としておおむね順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
安定した結果を得るために,測定機器を用いた実験の最適化,実験材料となる生物の生育条件や培地類の検討を行う。同分野の研究者から得た情報を活用して,標的となる物質の分離同定,機能解析を行う。
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Causes of Carryover |
外出自粛のため出張ができなかった。また,購入してある物品を一部活用して実験が実施できた。この残額と次年度予算により,当初の予定どおり細菌と宿主の共存を規定する物質の同定と機能に関し,研究を遂行して成果発表に結びつける。
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Research Products
(6 results)