2022 Fiscal Year Research-status Report
高リスク型ゲノム構造によるゲノム蛋白群の動的集合と機能制御
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20K06560
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
川上 広宣 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 准教授 (50403952)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ORC / 非典型DNA / 染色体複製 / 機能制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前任での研究の論文化に貢献するとともに(改稿版投稿中)。過去に報告した一本鎖DNA上での出芽酵母ORCの機能構造分化と制御(Kawakami et al., 2019, Genes Cells)をベースとして、更に発展させた。ORCは複製起点DNA二重鎖らせんの認識に必須な蛋白複合体であり、我々が最大サブユニットOrc1内に見いだしたモチーフeukaryotic origin sensor (EOS)は、基質DNAが二重らせんか一本鎖かによってORCの機能構造分化をもたらす(Kawakami et al., 2015, Sci. Rep.; Kawakami et al., 2019)。細胞内には一本鎖DNAを含め、二重らせんよりも高リスクとされる種々の非典型DNA構造が存在する。ORCの真正細菌オーソログDnaAにおいては、一本鎖DNAとの結合能の重要性が実験的に裏付けられている(Ozaki, Kawakami et al., 2008; Sakiyama, Kawakami et al., 2013)。一方、ORCの非典型DNA構造による制御の細胞内における役割や関与する染色体領域についての実験的証拠がない。 そこで本年度は、これらの実験的証拠を得ることを志向して、出芽酵母細胞内におけるORCの特異的制御因子を重点的に探索することとした。昨年度開発した「ORC1機能を遺伝学的に亢進させるゲノム領域を簡便にスクリーニングするシステム」を用いて探索規模を拡大させたところ、従来は見逃していたスクリーニングの特異性の問題が判明した。更に改良を行い、スクリーニングの特異性を従来よりも上げることに成功した。併行して、異なる原理によって制御因子をスクリーニングするシステムの開発にも着手し、ORC1機能の制御に関わるゲノムクローンを見いだすことに成功した。今後、スクリーニングの規模を拡大しつつ、個別解析を進めることで、ORCと非典型DNA構造との連携に関わる証拠を得たい。併行して、昨年度の実績の論文発表にも着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の目的の大半がすでに明確な成果を得ており、論文発表にも着手している。このため、おおむね順調に進展していると判断した。一方、スクリーニングシステムの開発と実際の運用にあたり、想定外の事態が生じて複数の原理を併行して開発するなど、実験計画の見直しも生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
スクリーニングシステムに関して実験計画の見直しが生じたため、個別解析などを翌年度に回すこととする。また、執筆中の論文の採択に向けて準備を進めるとともに、その他のデータについても順次論文化を進める。併行して発展的解析を進め、細胞内の解析や目的5の体系的遂行を十分実現していきたい。
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Causes of Carryover |
令和4年度に残額1,149,348円が生じたが、この主な理由は、実験計画の見直しによって次世代シーケンス消耗品を新たに発注することなくゲノミクス解析全般を賄えたことと、出張旅費が想定を大きく下回ったことが挙げられる。また、コロナ禍による影響の1つとして、学外出張をともなう実験の優先順位を変更したことも挙げられる。着実に得られたこれまでの成果を踏まえ、令和5年度は研究体制の増員を予定している。そこで残額は研究環境の更なる整備と、解析を加速するためのウェット実験費用に充てるとともに、研究成果報告費用として活用したい。
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