2020 Fiscal Year Research-status Report
フルオロフォビック効果による自発的膜タンパク質集積を用いた人工細胞膜構造体の創製
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20K06573
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
園山 正史 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (40242242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 俊之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (10248065)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リン脂質 / 膜タンパク質 / フッ素化 / 境界脂質 / フルオロフォビック効果 / フルオロフィリック効果 / 脂質膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究として進めてきた含フッ素DMPCアナログリン脂質分子群の合成法に準じて,本研究に用いる重要な材料である含フッ素DPPCアナログリン脂質分子群(Fn-DPPC,n =4, 6, 8)のグラムスケールの合成を行った。ODSカラムを用いたHPLCにより化合物を精製したところ,いずれの化合物もシングルピークを示した。したがって,十分に純度の高い化合物を得ることができたと考えられる。 そこで,Milli-Q水を用いてこれらの含フッ素DPPCアナログリン脂質を懸濁した試料の示差走査熱量測定(DSC)を行い,脂質膜の熱物性を調べた。その結果,Rf鎖長に依存して,吸熱ピークの形状や温度が異なることがわかった。主転移と考えられるピークの温度を比較したところ,F4-DPPCではDPPCに比べて大きく低下するのに対し,F6-DPCCではDPPCよりわずかに低い温度,そしてF8-DPPCではDPPCよりも著しく高くなることがわかった。転移の熱力学量(エンタルピーおよびエントロピー)を含めて,現在再現性が十分にあるか否かを確認中である。 さらに,来年度以降に含フッ素DPPCアナログリン脂質膜に再構成する膜タンパク質の発現・精製についても検討を開始した。プロトンやナトリウムイオンを運ぶ数種類の微生物ロドプシンのプラスミドを用いて,大腸菌による大量発現と精製法を検討した。その結果,純度の十分高い可溶化試料を再構成に用いるために十分な量で回収でき,またそれらが高い活性を示すことがわかった。今後はこれらの試料を用いて,脂質膜再構成試料の調製法を検討して行く。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の根幹をなす含フッ素DPPCアナログリン脂質分子群(Fn-DPPC)の合成は,当初見込んでいたよりも若干遅れ気味だったが,特に大きな問題も無く進んでいる。また,Fn-DPPCのDSC測定は順調に進み,現在再現性が十分にあるか否かを確認しており,近く類似構造を有する含フッ素DMPCアナログリン脂質分子群(Fn-DMPC)を含めた含フッ素リン脂質の特徴を明らかにすることができそうである。また,含フッ素リン脂質に組み込む膜タンパク質については,複数の微生物ロドプシンに対して大腸菌を用いた大量調製が可能な状況になっており,今後の再構成実験の準備が整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
含フッ素DPPCアナログリン脂質分子群(Fn-DPPC)の合成は順調に進んでおり,今後は,脂質膜の構造・物性の系統的解析および膜タンパク質機能場としてのRfディスクの特徴解析に研究の力点を置く。前者については,一般的に境界脂質と考えられている不飽和結合を有する脂質(POPCやDOPC)を含む混合膜の特徴を,種々の物理化学的計測法を駆使して明らかにする。後者については,種々の膜タンパク質を再構成した試料を調製し,再構成膜を構成する脂質の組成と膜タンパク質の構造・活性・物性との関連性を調べる。
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Causes of Carryover |
発注していた物品の納品が期限内に間に合わず2020年度中の支払いとならなかったため,次年度に支払う必要があり,次年度使用額が生じた。 2021年度に当該物品を購入することにより,当該科研費の研究を進める予定である。
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Research Products
(9 results)