2021 Fiscal Year Research-status Report
Unravelling the mechanism of the bacterial flagellar hook polymerization dependent on the hook-capping protein
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20K06581
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
松波 秀行 沖縄科学技術大学院大学, 生体分子電子顕微鏡解析ユニット, スタッフサイエンティスト (80444511)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細菌べん毛 / X線結晶構造解析 / クライオ電子顕微鏡 / サルモネラ菌 / フックキャップ / フック |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌べん毛フックはモータで発生した回転トルクをフィラメントへと伝達するユニバーサルジョイントとして機能する。フックキャップはフックの先端に結合してフックの構成タンパク質が効率的に重合することを介助するタンパク質複合体である。これまでの研究成果は、サルモネラ菌由来の野生型フックキャップ5量体のX線結晶構造とフックキャップのN末端側領域への変異導入によるフックの重合に及ぼす影響を考察した査読付きの国際学術論文として発表している。X線結晶構造解析によって3.3オングストロームの分解能で明らかになったサルモネラ菌の野生型フックキャップ5量体の構造から、フックキャップのN末端領域には5量体形成とフックとの相互作用に重要な領域が存在することを明らかにしている。一方、そのN末端領域の大部分はX線結晶構造解析において明瞭な電子密度が得ることができない柔軟な領域であることが判明した。そこで、N末端領域を含む完全長のフックキャップの構造を基に先端キャップ構造がフックの構成タンパク質を効率的に重合させる分子レベルの仕組みを明らかにするため、サルモネラ菌由来の野生型およびリジンをグルタミンに変異させたKQ変異型フックキャップのX線結晶構造解析とクライオ電子顕微鏡による高分解構造解析を目指した。これまでの研究では、X線結晶構造解析に向けたフックキャップの結晶化条件の検索とクライオ電子顕微鏡での撮影のためのクライオグリッドの作成条件の最適化を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サルモネラ菌由来の野生型およびKQ変異型フックキャップは大腸菌内で発現させ、陰イオン交換、疎水、分子サイズ排除クロマトグラフィーを用いて単一に精製した。野生型およびKQ変異型フックキャップ5量体を含む画分を濃縮後、クライオグリッド作成装置を用いて凍結した。クライオ電子顕微鏡内に保持したクライオグリッドから自動測定でフレーム画像を撮影後、画像解析プログラムで処理した。二次元クラス平均像から判断して、氷包埋した野生型フックキャップはKQ変異型フックキャップと同様に分子の配向に偏りが見られ5回回転対称軸方向の投影像のみが現れた。また、5量体として存在するフックキャップの割合が少ないことも判明した。野生型とKQ変異型フックキャップでは変異導入によって分子表面の電荷が変化し、氷包埋時にタンパク質分子の配向の偏りが解消することを期待したが、フックキャップの分子量が120万とクライオ電子顕微鏡での構造解析の対象としては比較的小さいこともあり分子の配向に大きな影響を与えなかったと考えている。酸化グラフェンで表面を覆ったグリッドを作成した場合においても同様の傾向が見られた。3次元再構成に不可欠な様々な方向からのタンパク質分子の投影像が得られるよう界面活性剤等の添加によって氷包埋中のタンパク質分子の配向を変える必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでX線結晶構造解析に向けたフックキャップの結晶化と並行して、クライオ電子顕微鏡による構造解析を進めてきたがクライオグリッドの調製条件の検索に難航している。野生型およびKQ変異型のフックキャップを用いてクライオグリッドを作成したところ、野生型およびKQ変異型のフックキャップ共に試料凍結の際にタンパク質分子が一定の方向に偏る傾向が強く現れた。また、撮影した投影像を詳細に見ると、フックキャップの5量体の割合が少なく、おそらく試料凍結の際に5量体から単量体へと解離している可能性が示唆された。以上の理由から、これまでのところ高分解能の構造解析に適したクライオグリッドが得られていない。そこで、クライオグリッド作成の工夫として、フックキャップ5量体の割合をできる限り多くするために、化学架橋剤の添加による5量体構造の直接的な安定化やグリセロールやショ糖密度勾配と組み合わせて単離するGraFix法 (Nat Methods 5, 53-55 (2008))を試みる。また、タンパク質分子の配向が変わることを期待して酸化グラフェンや超薄のカーボンフィルムを張り合わせたグリッド上にタンパク質を吸着させて凍結させる。それでもタンパク質分子の配向の偏りに改善が期待できない場合には、クライオ電子顕微鏡内で試料ステージを傾斜させた状態で投影像を撮影する。
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Causes of Carryover |
旅費とその他論文の出版に関わる費用の支出が少なかったための差額が生じている。次年度に物品費の一部として使用を予定している。
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