2021 Fiscal Year Research-status Report
アクチン繊維を極性揃えて配向させる植物ミオシンの新規機能の解明
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20K06583
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
伊藤 光二 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (50302526)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ミシン / 分子モーター / アクチン / 原形質流動 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物細胞内ではアクチン繊維が極性を揃えて配向している。この極性を揃えたアクチン繊維の上を,小胞体に結合したミオシンXIが一方向に動くので,植物細胞内では原形質流動と呼ばれている一方向性の流れが生じている。近年,様々な実験結果から「ミオシンXIとアクチン繊維との相互作用により,アクチン繊維は自律的に極性を揃えて配向する」ことが示唆されている。しかし,その分子機構は不明である。本研究においては、この機能解明のため、研究代表者が独自に開発したミオシンXIの発現、精製系により様々な種類のミオシンXIを精製し、そして、精製した様々な種類のミオシンXIを用いて、ミオシンXIの酵素・運動機能はじめ様々な生物物理学的、生化学的な手法による機能解析・構造解析を行う。 2021年度においては、2つの査読付き論文(2022年2月発表PNAS(責任著者 伊藤), 2022年2月 発表Sci Rep(責任著者 伊藤))で、ミオシンXIの機能解析・構造解析について発表した。PNASは代表者がクローニングに成功したシャジクモのミオシンXI-1, XI-2, XI-3, XI-4のアミノ酸配列および酵素・運動機能に報告である。たシャジクモ ミオシンXI-1はシャジクモの原形質流動速度から70年以上前にその存在が予則されていた生物界最速のミオシンの同定にあたる。また、本論文ではシロイヌナズナミオシンXI-2の高分解能結晶構造解析についても発表した。これはクラスXIミオシンの世界で最初の高分解能構造解析の報告である。また、シロイヌナズナミオシンXI-2のホモロジーモデルにより、生物界最速のシャジクモのミオシンXI-1の構造解析を行い、最速の運動はアクチン結合領域によって引き起こされることを示した。Sci RepはクラスXIミオシンの運動、速度の調節に関する最初の論文である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度はおおむね順調に進んだ。新型コロナの感染予防知識が行き渡り、研究生、大学院生が感染に留意して研究を続けることが可能になったことが大きい。2021年度は、今後の研究に使用するクローニングに成功したシャジクモのミオシンXI-1, XI-2,XI-3, XI-4のアミノ酸配列、運動速度、酵素活性および、その構造を明らかにし、また、シャジクモ ミオシンXI-1については変異実験により高速運動機構が明らかすることができた(2022年2月 PNAS (責任著者 伊藤))。また、シロイヌナズナのミオシンXI-2を用いてクラスXIミオシンの酵素・運動の調節機能に関しても明らかにした(2022年2月 Sci Rep (責任著者 伊藤))。これらにより、アクチン繊維を極性を揃えて配向させる今研究の中心として使用するシャジクモ ミオシンXI-4およびシロイヌナズナ ミオシンXI-2のミオシン酵素・運動・構造の基本的データを揃えることができた。 また、シャジクモ ミオシンXI-4によるアクチン繊維の極性揃える機構については、その第1段の論文を、2022年度の前半に投稿する予定である。さらに、シロイヌナズナ ミオシンXI-2によるアクチン繊維の極性揃える機構については、ミオシンのある特定の領域(秘匿事項)が重要であることを明らかにした。さらに、シロイヌナズナのミオシンXI-2欠失変異体株に、その特定領域の変異を持つミオシンXI-2を発現させることを成功した。今後、このシロイヌナズナにおけるアクチン繊維の配向を解析する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
シャジクモ ミオシンXI-4によるアクチン繊維の極性揃える機構については、最初の論文投稿に必用なデータ揃え、2022年度の前半に論文投稿する(まず、BioRxivに投稿し、そこから査読付き論文にトランファーする予定)。その後、引き続き、シャジクモ ミオシンXI-4によるアクチン繊維の極性揃える機構の詳細な機構解明研究について生物物理学的方法で行う(シャジクモ ミオシンXI-4関しての2本目以降の論文に該当)。アクチン繊維の極性揃える機構の詳細な機構に必用なミオシン領域を特定し、様々な生物物理学的手法により、アクチン繊維の極性揃える機構の詳細な機構明らかにする。シロイヌナズナ ミオシンXI-2がアクチン繊維の極性揃える機構については、その領域の絞りこみを行う。また、シロイヌナズナのミオシンXI-2欠失変異体株に、絞り込んだ領域の変異を持つミオシンXI-2を発現させ、アクチン繊維の配向を解析することにより、シロイヌナズナを用いて絞り込んだ領域がアクチン繊維の極性配向に果たす役割を明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナ初年の2020年度は研究があまり進まず、予算消化もあまり進まなかず、2021年度にその予算を繰り越した。 2021年度は新型コロナ2年目ということもあり感染防止のノウハウもわかり、研究生、大学院生と研究室での研究を慎重に進めた結果、研究は順調に進んだ。しかし、出張による共同研究はハードル高く旅費や共同研究にかかる研究費に相当する研究には着手できなかった。2022年度は研究室における研究を引き続きは順調に遂行させるとともに、共同研究で大阪大学、名古屋大学に研究生、大学院生が出張する必用もあり,繰越した予算を使用する計画である。
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