2020 Fiscal Year Research-status Report
一細胞フェノーム取得技術の大規模並列化に関する基盤的研究
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20K06584
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大貫 慎輔 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任助教 (80739756)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 次世代シーケンサ / 細胞形態 / FACS / DNAバーコード / 顕微鏡画像 / 遺伝子破壊株 / プールド培養液 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、まず研究環境の構築を行った。8月頃までに次世代シーケンサの導入、および使用法を確認し、運用可能な状態となった。また、並行して出芽酵母株や、DNA量の測定装置、およびFACSを準備し、研究遂行に必要な試料や機材の準備を整えた。 次に、FACS分取実験の条件検討を行うために、顕微鏡画像を取得済である出芽酵母の形態データを使用して、細胞量比から細胞形態を定量するシミュレーションおよびアルゴリズム開発を行った。まず、出芽酵母の細胞外形の顕微鏡画像から細胞の大きさや丸さなど26種類の一細胞形態パラメータを定義した。次に、蛍光顕微鏡画像を取得済みの約100株の遺伝子破壊株を混合した培養液(プールド培養液)を複数の細胞数で調製したと仮定し、各株の細胞数は倍加速度に応じて設定した。この条件のもと、顕微鏡画像から推定した各形態パラメータの確率密度に従って、設定した個数分だけ細胞をランダムに発生させた。複数の条件で各株を二分して、閾値より上側の値を持った細胞の量比を計算したところ、26パラメータ中9割以上のパラメータで顕微鏡画像による測定値と0.8以上の高い相関が得られる条件を見つけることができた。 最後に、約5000の遺伝子破壊株を混合したプールド培養液を準備し、FACSと次世代シーケンサを使用して細胞の大きさを測定できるかどうか検証した。このために、プールド培養液を培養し、FACSで分取した後、DNA抽出およびPCRを経て、次世代シーケンサによりDNAバーコードを定量するための実験系を確立し、実験プロトコルを試作した。試作したプロトコルにより得られた細胞の大きさと、顕微鏡画像により測定した細胞の大きさを比較したところ、P < 0.01で有意な相関が得られた。これらのことから、FACSと次世代シーケンサを組み合わせることで細胞の大きさを定量することが可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において研究環境を構築し、実験プロトコルおよび解析アルゴリズムのプロトタイプを作成して、研究目的の根幹に関わる実証に成功することができた。これは当初の計画以上の進展であるが、当初予期していなかった5つの解決すべき課題も見出されたことから、おおむね順調に進展していると判断した。 一つ目の課題は、次世代シーケンサを実施するためのDNAライブラリを調製する際に、必要となるPCRの増幅効率が予想以上に低いことである。これはPCR条件が最適でない可能性が考えられ、非特異的なDNA領域の増幅により実験系の精度を下げる原因となりうる。二つ目の課題は、次世代シーケンサによる塩基配列の読み取り精度が予想以上に低いことである。読み取った塩基配列のうち約6割は正常に読み取ることができず、解析することができなかった。次世代シーケンサのスループットが十分に高いため、残りの4割だけを使用しても目的の解析は可能ではあるが、倍以上のデータを有効に活用するための工夫が必要である。三つ目は、読み取ったサンプルの全てにおいて野生型株のDNAバーコードが予想以上に多く検出されることである。原因が実験過程におけるコンタミネーションである場合、実験系の精度を下げる可能性があるため、原因の追究と改善が必要である。四つ目は、検出される変異株の個数が予想より低いことである。約5000株のうち、3割~7割程度の株しか検出されなかったため、検出数を上げる工夫が必要である。五つ目は、出力されたDNA配列情報の解析に予想以上の時間が必要なことである。1回のシーケンスで24の実験系の塩基配列を得られるが、現在の解析環境では1実験につき1回の解析を試行するのに数日を要する。研究進捗の律速になりうるため、高速に計算する環境とアルゴリズムの整備が必要である。 現在は、これらの課題の解決に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの研究で見出された課題への取り組みと、当初予定していた研究の両方を進める。 課題への取り組みとして、まずPCRの条件検討を進める。PCRに使用する酵素は、前年度までに少数試してあるが、使用する酵素によって、得られるPCR産物量にわずかな違いがみられているため、さらに複数の候補を試す。また至適温度などは酵素によって異なるため、最適な条件を探索する。次に、プールド培養液を再度調製する。現在使用しているプールド培養液のうち、多くの株が検出されなかった原因の一つとして、プールド培養液の調整法により細胞が死滅している可能性がある。そこで、使用する各株を一つずつ液体培養し、高い鮮度を維持した状態で混合する。ただし、これにより検出される株の割合が向上するかどうか調べるために、100株程度の小スケールのプールド培養液の調製から始める。PCRの条件検討とプールド培養液の再調製は、同時に混合割合の不均一性やシーケンシング精度の問題に対する対策としても期待できる。最後に高速な計算環境の整備を行う。このためにスーパーコンピュータの利用や、それに最適化したアルゴリズムの開発を行う。 当初の研究計画で予定していた研究として、蛍光タンパク質発現変異株の作製を進める。手始めに、上記で作成する100株の小スケールで蛍光タンパク質の導入を行う。この際、Synthetic Genetic Arrayなどのハイスループットな遺伝子組み換え法を応用可能かどうか検討する。または、個々の変異株に対して個別に遺伝子導入を行って作成する。蛍光タンパク質で細胞外形を標識した変異株のコレクションが作成できたら、iIACSへの実装を検討する。まずはiIACSにて細胞の大きさで分取し、顕微鏡画像による測定値と相関が得られるかどうかを確認する。これができたら、他の形態的特徴を測定するアルゴリズムの実装を順次進めていく。
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[Journal Article] Sequentially addressable dielectrophoretic array for high-throughput sorting of large-volume biological compartments2020
Author(s)
A Isozaki, Y Nakagawa, M H Loo, Y Shibata, N Tanaka, D L Setyaningrum, J-W Park, Y Shirasaki, H Mikami, D Huang, H Tsoi, C T Riche, T Ota, H Miwa, Y Kanda, T Ito, K Yamada, O Iwata, K Suzuki, S Ohnuki, Y Ohya, Y Kato, T Hasunuma, S Matsusaka, M Yamagishi, M Yazawa, S Uemura, K Nagasawa, H Watarai, D Di Carlo, K Goda
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Journal Title
Science Advances
Volume: 29
Pages: eaba6712
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Virtual-freezing fluorescence imaging flow cytometry2020
Author(s)
Mikami H, Kawaguchi M, Huang CJ, Matsumura H, Sugimura T, Huang K, Lei C, Ueno S, Miura T, Ito T, Nagasawa K, Maeno T, Watarai H, Yamagishi M, Uemura S, Ohnuki S, Ohya Y, Kurokawa H, Matsusaka S, Sun CW, Ozeki Y, Goda K.
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Journal Title
Nature communications
Volume: 6
Pages: 1162
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Intelligent image-activated cell sorting 2.02020
Author(s)
Isozaki A, Mikami H, Tezuka H, Matsumura H, Huang K, Akamine M, Hiramatsu K, Iino T, Ito T, Karakawa H, Kasai Y, Li Y, Nakagawa Y, Ohnuki S, Ota T, Qian Y, Sakuma S, Sekiya T, Shirasaki Y, Suzuki N, Tayyabi E, Wakamiya T, Xu M, Yamagishi M, Yan H, Yu Q, Yan S, Yuan D, Zhang W, Zhao Y, Arai F, Campbell RE et al.
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Journal Title
Lab on a Chip
Volume: 20
Pages: 2263-2273
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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