2021 Fiscal Year Research-status Report
一細胞フェノーム取得技術の大規模並列化に関する基盤的研究
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20K06584
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大貫 慎輔 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任助教 (80739756)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞形態 / 出芽酵母 / DNA barcode / Bar-seq / FACS |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、前年度までの研究で見出された課題への取り組みと、当初予定していた研究の両方を進めた。 課題への取り組みとして、まずPCRの条件検討を進めた。PCRに使用する酵素を複数使用して、それぞれ複数の温度でPCRを実施して、実験条件の最適化を行った。これによりセルソーターで分取した培養液からDNAバーコードを安定的に増幅可能になった。次に、100株程度の小スケールのプールド培養液を調製して、プールド培養液の再調整によって検出される株の割合が向上するかどうか調べた。非必須遺伝子のうち二倍体のホモ破壊株で細胞の大きさを既に定量済みの110株から、生育のよい89株を選んで個別に培養し、プールド培養液を新たに調整した。これを使用して複数回の繰り返し実験を行ったところ、検出された株は3割程度となった。このことから、検出される株が少ない原因にはプールド培養液の鮮度や株の増殖遅延以外にもあることが考えられた。最後に、高速な計算環境の整備を行った。C言語ベースのライブラリでBLASTアルゴリズムを組み込むことで小規模の計算機環境で短時間に解析が可能となった。 当初の研究計画で予定していた研究として、蛍光タンパク質発現変異株の作製を進めた。手始めに、上記で使用した110株のうち、80株に蛍光タンパク質を導入し、プールド培養液を作成した。この際、Synthetic Genetic Arrayなどのハイスループットな遺伝子組み換え法の応用可能性を検討し、これを実現可能な遺伝子マーカーの組み合わせを設定した。株の作成と並行して、野生型とは異なる特徴的な形態表現型の変異株を一つ選び、iIACSを通してからDNAシーケンシングを行うことで、実施要領を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究で見つかった5つの課題のうち3つは解決し、当初の研究計画で予定していた研究も実施できたことから、おおむね順調に進展していると判断した。 残された2つの課題としては、①検出される変異株の個数が予想より低いこと、②読み取ったサンプルの全てにおいて野生型株のDNAバーコードが予想以上に多く検出されることである。前者①としては、昨年度の研究で、約5000株のプールド培養液のうち3割~7割程度の株しか検出されず、また本年度の研究で89株の小スケールでプールド培養液を調製し直してもなお3割程度の株しか検出されなかったことが問題点である。昨年度使用した5000株のプールド培養液は長期間冷凍保存されていたことから、多くの株が死滅している可能性が考えられたため、これを検証するために本年新たに株を培養してプールド培養液を再調製した。しかし、検出される株の割合に大きな改善が見られなかったため、他の可能性が考えられた。原因の一つとしては、プールド培養液を培養する段階で倍加速度の速い株が支配的になり遅い株が検出されなくなる可能性が考えられた。また他にも、変異株ライブラリのうち約2割の株でDNAバーコードやプライマー配列に変異が見つかっており、これにより検出されない可能性が考えられた。次に、後者②としては、読み取ったサンプルの全てにおいて野生型株のDNAバーコードが予想以上に多く検出されることである。野生型のDNAバーコードに変異が入っているという報告があったため、この可能性を検証するために使用している野生型株のDNAバーコード配列を読んだところ、設計されたバーコードと同じ配列であることがわかり、バーコード配列に問題はないことがわかった。また新たに調製したプールド培養液でも野生型株が予想以上に多く検出されたため、他の原因であることが考えられた。 現在は、これらの課題の解決に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの研究で見出された課題への取り組みと、当初予定していた研究の両方を進める。 課題への取り組みとして、まずDNAバーコードのリファレンスリストをアップデートして再解析を行う。5000株のうち2割程度の株でDNAバーコードとユニバーサルプライミングサイトに変異があるため、現在使用しているDNAバーコードのリファレンスリストでは検出できない株があると考えられる。そこで変異したDNAバーコードの配列にリファレンスリストをアップデートして再度解析を行う。次に、プライミングサイトに対しては、新たにPCRプライマーを再設計する。最後に、株の増殖速度の違いが株の検出に影響しているかどうか調べるために、検出された株とされない株の間で増殖速度を比較する。この時、検出されない株の増殖速度が遅い場合、実験プロトコル中で培養の段階を回避するよう検討する。 当初の研究計画で予定していた研究として、GFPを導入した80株のプールド培養液を使用した実証実験を進める。予備実験としてFACSを使用してGFP導入株のプールド培養液を使用した実験プロトコルの実現可能性を検証したのち、iIACSを使用してiIACS-DNAseqの実証実験を行う。これと並行して、Synthetic Genetic Arrayによる遺伝子組み換え法のために設定した遺伝子マーカーの組み合わせを用いて5000株にGFPを導入する。80株のプールド培養液でiIACS-DNAseqが実証できたら、5000株にスケールアップして大規模並列化の実証を行う。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Deep imaging flow cytometry.2022
Author(s)
Huang K, Matsumura H, Zhao Y, Herbig M, Yuan D, Mineharu Y, Harmon J, Findinier J, Yamagishi M, Ohnuki S, Nitta N, Grossman AR, Ohya Y, Mikami H, Isozaki A, Goda K.
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Journal Title
Lab Chip.
Volume: 22
Pages: 876-889
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] High-throughput platform for yeast morphological profiling predicts the targets of bioactive compounds.2022
Author(s)
Ohnuki S, Ogawa I, Itto-Nakama K, Lu F, Ranjan A, Kabbage M, Gebre AA, Yamashita M, Li SC, Yashiroda Y, Yoshida S, Usui T, Piotrowski JS, Andrews BJ, Boone C, Brown GW, Ralph J, Ohya Y.
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Journal Title
NPJ Syst Biol Appl.
Volume: 8
Pages: 3
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Jerveratrum-Type Steroidal Alkaloids Inhibit β-1,6-Glucan Biosynthesis in Fungal Cell Walls.2022
Author(s)
Kubo K, Itto-Nakama K, Ohnuki S, Yashiroda Y, Li SC, Kimura H, Kawamura Y, Shimamoto Y, Tominaga KI, Yamanaka D, Adachi Y, Takashima S, Noda Y, Boone C, Ohya Y.
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Journal Title
Microbiol Spectr.
Volume: 10
Pages: e0087321
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Poacic acid, a β-1,3-glucan-binding antifungal agent, inhibits cell-wall remodeling and activates transcriptional responses regulated by the cell-wall integrity and high-osmolarity glycerol pathways in yeast.2021
Author(s)
Garcia R, Itto-Nakama K, Rodriguez-Pena JM, Chen X, Sanz AB, de Lorenzo A, Pavon-Verges M, Kubo K, Ohnuki S, Nombela C, Popolo L, Ohya Y, Arroyo J.
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Journal Title
FASEB J.
Volume: 10
Pages: 1299
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Genome Editing to Generate Sake Yeast Strains with Eight Mutations That Confer Excellent Brewing Characteristics.2021
Author(s)
Chadani T, Ohnuki S, Isogai A, Goshima T, Kashima M, Ghanegolmohammadi F, Nishi T, Hirata D, Watanabe D, Kitamoto K, Akao T, Ohya Y.
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Journal Title
Cells
Volume: 10
Pages: 1299
DOI
Peer Reviewed / Open Access