2022 Fiscal Year Annual Research Report
脂質ラフトをターゲトとする新たな局所麻酔薬の作用機構の提唱
Project/Area Number |
20K06590
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木下 祥尚 九州大学, 理学研究院, 助教 (40529517)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脂質ラフト / 局所麻酔薬 / 蛍光共鳴エネルギー移動 / 脂質膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜にはスフィンゴミエリン(SM)やコレステロールが集積して形成される固く秩序だった膜領域「脂質ラフト」が存在する。このラフトは、不飽和リン脂質で形成される流動的な膜領域から相分離した状態で存在しており、細胞内外間のシグナル伝達のプラットフォームを形成する。近年、全身麻酔薬が脂質ラフトを介して作用を発現することが明らかになり、幅広い注目を集めているが、局所麻酔薬の作用機序については未解明なままである。本研究では、局所麻酔剤の新たな作用機序を提唱するため、代表的な局所麻酔剤であるリドカイン、テトラカイン、ブピバカインがマウス神経芽細胞腫(Neuro-2a)の細胞膜に形成される脂質ラフトに及ぼす影響を調査した。 まず、申請者らが開発した脂質の挙動を高精度で再現する蛍光標識脂質プローブを利用し、局所麻酔薬存在下で生じる脂質ラフトの構造変化を調査した。その結果、麻酔薬存在下で、蛍光SMと代表的不飽和リン脂質DOPC間に生じるフェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)が増加することが明らかになった。また、拡散係数測定により、局所麻酔剤が膜中でのSMの拡散係数を増加させることが確認された。一方で、蛍光DOPCの拡散係数の値に有意な変化が見られなかったことから、局所麻酔剤は細胞膜全体の流動性には影響を与えないことが示唆される。これらの結果は、局所麻酔薬が脂質ラフトを標的とし、麻酔薬存在下でラフトの形成が阻害されることを支持している。
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Research Products
(3 results)