2022 Fiscal Year Annual Research Report
量子化学計算による原始RNAのL-アミノ酸選択的アミノアシル化の分子機構解明
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20K06592
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
安藤 格士 東京理科大学, 先進工学部電子システム工学科, 准教授 (30385546)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アミノ酸ホモキラリティー / QM/MM |
Outline of Annual Research Achievements |
「アミノ酸にはL型とD型の光学異性体が存在するが、なぜ現在の生物はL-アミノ酸のみを利用しタンパク質を合成するのか?」これは生命進化の大きな謎の一つである。興味深いことに、原始的なRNA分子では、酵素がなくとも、L-アミノ酸が優先的に結合(アミノアシル化)されることがわかっており、これがアミノ酸キラル選択の起源となった可能性がある。本研究では、量子力学計算、分子力学・分子動力学計算のハイブリッド計算にアンブレラ・サンプリング法を適用することにより、原始RNAにおけるD/L-アミノ酸のアミノアシル化反応に必要な自由エネルギーを算出するとともに、遷移状態も明らかにする。これにより、RNAのアミノ酸キラル選択性のメカニズムの詳細を構造学的、エネルギー論的な視点から解明することを目的としている。 2022年度は、これまでの計算結果をまとめ上げ、その内容を国内の学会で発表、学術雑誌に投稿、掲載されることを目標として研究を行った。計算の結果、このRNAのアミノアシル化反応において、L-アラニンの反応自由エネルギーの障壁の高さは、D-アラニンに比べ9 kcal/mol程低いと計算された。また、遷移状態において活性部位周辺の各官能基の幾何学的な配置はL-アラニンとD-アラニンでは大きく異なっており、D-アラニンに比べL-アラニンでは遷移状態を静電的により安定化させるような構造をとっていることを見出した。これらの研究結果を2022年の生物物理学会で発表した。また、本研究成果は国際雑誌「Life」に2023年3月に掲載された。 研究期間全体を通じ、生命進化の大きな謎の一つである「アミノ酸のホモキラリティー」の起源問題に対し、量子化学、分子化学の視点から重要な光を投げかけると同時に、キラル選択的な反応を制御するタンパク質工学・核酸工学への新たな展開も期待でる成果が上げられたものと考えている。
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Research Products
(2 results)