2020 Fiscal Year Research-status Report
DNA脱メチル化酵素による抗体遺伝子再編成制御メカニズムの解析
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20K06598
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
瀬尾 秀宗 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (00561531)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | DNAメチル化 / クロマチン構造 / 相同組換え / TETファミリータンパク質 / 抗体遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で、DNA脱メチル化酵素TETファミリータンパク質に属する因子の一つであるTET3のノックアウトDT40細胞で、抗体遺伝子座における相同組換えの頻度が低下することを示す結果を得ていた。本現象のメカニズムをより詳細に明らかにする目的で、当該年度においては、まずTET3KO株の抗体遺伝子座の配列解析を実施した。その結果、野生株と比較し、使用される偽遺伝子の数に顕著な減少が見られることが明らかになった。このことは、TET3のノックアウトは偽遺伝子の選択の過程にも関与している可能性を示唆している。 また、TET3はDNA脱メチル化酵素であることから、TET3ノックアウト株における抗体遺伝子座のメチル化状態の解析を行った。解析手法としてはDNAメチル化の標準的解析法であるバイサルファイト方を用いた。抗体遺伝子座と、抗体遺伝子座の変異導入に必須であるとされる シス領域について調べたが、TET3ノックアウト株においてメチル化レベルが有意に上昇はしているものの、絶対的なDNAメチル化レベルは基底レベルであった。そこで、偽遺伝子領域の DNAメチル化パターンを解析したところ、偽遺伝子領域 において顕著に DNAメチル化レベルが上昇していることが判明した。興味深いことに、このDNAメチル化は非CpG配列中のシトシンに生じていることも示された。メチル化非CpGシトシンは、MeCP2 (methyl-CpG binding protein 2)との結合能 があり、ヘテロクロマチン状態を誘導する可能性がある。以上から、DT40細胞の抗体遺伝子多様化にはTET3が中心的に関与し、偽遺伝子領域のメチル化・脱メチル化を介して制御している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定通りTET3ノックアウト株の抗体遺伝子の多様化状況の解析を実施し、野生株と比較して使用する偽遺伝子の数に顕著な違いが生じていることを明らかにしている。加えて計画に従い、TET3ノックアウト株と野生株での抗体遺伝子座におけるメチル化状態の比較も行っている。ここでは機能的可変領域や偽遺伝子領域のみならず当初予定していなかったシス領域のメチル化状態についても解析を実施し、重要な知見を得ている。また組換え関連因子の発現状況についても明らかにしており、進捗は概ね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、TETファミリータンパク質に属する3種の因子(TET1、TET2、TET3)に関しては既に単一ノックアウト株を作製し、解析をしてきた。それぞれのTETタンパクの持つ機能をより詳細に解析するために、二重変異株についても作製しており、一部の解析を完了させている。今後はこれらの解析を進める予定である。抗体遺伝子可変領域や偽遺伝子のDNAメチル化状況に加え、シス領域のメチル化状況についても調べる予定である。これらに変化が見られた場合、相同組換えやDNAメチル化に関連する因子の発現状況についても確認する。これらの解析を終えた後には、三重(TET1, TET2, TET3)変異株の作製についても試み、株が得られた際は同様の解析を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
変異株の解析により想定よりも顕著な結果が得られたことから、実験の規模を小さく抑えることが出来たことや、想定よりスムーズに実験が完了したことにより消耗品の消費が抑えられたこと、さらにより効率の良い予算管理を実施したため。
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