2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K06601
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
梶川 正樹 東京工業大学, 生命理工学院, 講師 (90361766)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 転移因子 / LINE / レトロトランスポゾン |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物のゲノム中には、Long Interspersed Element (LINE)、と呼ばれる転移因子が存在する。転移因子LINEは、自身のDNA配列から転写されたRNAを逆転写でコピーし、このコピーを宿主ゲノムに挿入することで転移・増幅する。LINEは、宿主ゲノム内に莫大なコピー数で存在しており、例えばヒトではゲノム当たり約90万コピー、すなわち、ヒトゲノムの約21%はLINE配列で構成されている(その他の転移因子も含めれば、ヒトゲノムの約半分は転移因子である)。一般的なLINEは、転移・増幅に必要なタンパク質を自身の内部にコードしている。しかし、このLINEタンパク質のみでは転移を行うことができず、宿主タンパク質もLINE転移に関与すると考えられている。また、宿主タンパク質は過剰なLINE転移を抑制(または調節)する働きも持つと考えられるが、どのような宿主タンパク質がどのようにLINE転移に関与するのかほとんど明らかにされていない。我々の研究では、ゼブラフィッシュの生体内でLINE転移を誘発する実験系を構築しており、この実験系を用いて何らかの宿主タンパク質がLINEの転移をLINEタンパク質の翻訳レベルで抑制していることを明らかにしてきた。また、この抑制は外部から導入したLINE RNAには機能しないことも明らかにした。これらの結果は、LINE RNAの転写段階で、LINEタンパク質の翻訳を抑制する何らかの宿主タンパク質がLINE転移中間体に導入される可能性を示唆する。今後は、外部から導入したLINE RNAに形成されるLINE転移中間体と、生体内で転写されたLINE RNAに形成されるLINE転移中間体をそれぞれ単離後、比較解析し、LINE転移をLINEタンパク質の翻訳レベルで抑制している宿主タンパク質の同定を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初の目的とは若干異なるが、LINE転移の新規抑制機構を発見することに成功した。LINEの転移は、通常、LINE転移の初期段階(LINEの転写)で起こると考えられてきた。しかし、本研究から得られた研究結果は、これまで考えられてきた抑制機構に加えて、異なる段階、すなわち、LINEタンパク質の翻訳段階でもLINE転移の抑制が起こることを示している。本研究により、今後、LINE転移の調節機構の理解がより一層深まると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究から、LINE転移の翻訳レベルでの抑制機構は、生体内で転写されたRNAには作用するが外部から導入したRNAには作用しないことが明らかになった。今後は、この違いが何に起因するのか、それぞれのRNAから転移中間体を単離、比較解析することでLINE転移抑制機構の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
本来は本年度に計画していたLINE転移中間体の質量分析解析が、転移中間体の単離に時間がかかったため次年度に行うことに変更した。残額はこの解析に使用する計画である。
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