2021 Fiscal Year Research-status Report
Meiotic G2/M-phase transition by maturation-inducing hormonal signaling
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20K06618
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
岸本 健雄 お茶の水女子大学, サイエンス&エデュケーションセンター, 客員教授 (00124222)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 英一 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (00323808)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞周期制御 / 卵細胞 / 細胞内情報伝達 / 卵成熟誘起ホルモン受容体 / cyclin B-Cdk1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画では、ヒトデの卵成熟誘起ホルモンである1-methyladenine (1-MeAde) の卵表受容体の分子実体を同定し、卵成熟誘起ホルモンによるG2/M期移行シグナリングの全容を全動物で最初に判明させることを目指している。事前研究から、この卵表受容体と期待されるGPCR (G protein-coupled receptor) のcDNAを一つに絞ることができているので、このcDNAがコードするタンパク質(候補GPCR)がまさに目指している分子であることを確証したい。そのために、本年度は以下の実験を実施した。 (1) 昨年度に引き続き、候補GPCRの細胞内機能ドメイン(C末テイル部と2番目の細胞内ループ)に対する抗体(内在性タンパクを認識できることは確認済み)による機能阻害を目指した。卵内に微小注射した抗体を卵表層にターゲティングする道具を開発し、そのmRNAを卵内で発現させたところ、どちらの抗体の場合も、対照実験に比べて一応の阻害効果を示した。しかし、説得力十分の効果とはいいがたいとの評価である。 (2) そこで、N末側の細胞外領域および膜貫通領域のうちの3番目の細胞外ループの、それぞれに対する抗体を作製して、細胞外からの1-MeAde効果の阻害あるいは昂進の有無をみようとしている。 (3) 別の機能阻害の方法として、候補GPCRの機能不全型変異体による競争阻害を試みた。そのために、候補GPCRのC末端を一部欠損させた変異体のmRNAを卵内で発現させたところ、1-MeAdeの卵成熟誘起効果が僅かに抑制された。対照実験として、正常型mRNAの場合は僅かに昂進された。この結果は候補GPCRがまさに求めている1-MeAde受容体であることを支持するので、実験の最適条件の検討や、発現させた候補GPCR変異体の細胞膜局在の確認を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最大の理由としては、前年度同様、コロナ禍による種々の制限で、実験を思い通りに進められなかったことが挙げられる。具体的には、実験の実施そのものに時間的な制約があったことだけではない。実験材料であるヒトデは採集後に実験室内で維持しており、通常時でも卵を実験に使用できる時期は限られるが、その限られた期間に合致するように実験を実施できなかったことが相当に影響した。こればかりは、コロナ禍の収束を待つしかない。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度にも述べたが、「候補GPCRの機能阻害による必要性の証明」こそが、本研究計画での最重要課題である。そのため、細胞外からにせよ細胞内からにせよ、あるいは中和抗体を用いるにせよ他の手法によるにせよ、あらゆる手を尽くしたい。 実際、今回に作製したN末側の細胞外領域2ヶ所に対する抗体を用いた解析から、候補GPCRのN末側細胞外領域では、2ヶ所以上の切断が起こっている可能性が示唆された。GPCR一般についての知見によれば、これらの切断断片は単に切り捨てられるのではなく、細胞膜貫通領域につながるN端側と複合体を形成して、リガンドの認識や受容に関わる場合も多いとされている。そのため、今回見出した切断にもそのような機能の獲得に関与することが期待されるので、その点の解析を進めたい。それによって、候補GPCRがまさに求めていた1-MeAde受容体であることを証明するための、新たな手掛かりが得られる可能性が高いと見込んでいる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、コロナ禍で旅費を使用しなかったことが大きな理由である。それに加えて、実験時間が制約されたことにより、消耗品費も少なめとなった。 今後の使用計画としては、実験の遅れの取り戻しのための消耗品費と、最終年度での論文の英文校閲費用と投稿費用を予定している。
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Research Products
(4 results)