2020 Fiscal Year Research-status Report
卵母細胞における小胞体-ミトコンドリア接触領域の生理機能解析
Project/Area Number |
20K06627
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
若井 拓哉 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (60557768)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 卵母細胞 / ミトコンドリア / 小胞体 / オルガネラ / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
卵母細胞は、生涯で排卵まで至る数に限りがあり、また加齢に伴い品質低下することが広く知られている。本研究では、哺乳動物の卵母細胞の品質を制御すら細胞小器官(オルガネラ)として、ミトコンドリアと小胞体に着眼し、特に両オルガネラの接触領域(Mitochondria-associated ER membrane:MAM)の制御とその生理的な役割を明らかにすることを目的とした。令和2年度は、ミトコンドリアの動態とMAMの局在の関連について調査した。ミトコンドリアは融合と分裂を繰り返す動的オルガネラであり、我々は特にミトコンドリアの分裂を制御するDynamin-related protein 1(Drp1)に着目し、標的タンパク質を特異的に分解する方法として開発されたTrim-Away 法を用いて、卵母細胞におけるDrp1ノックダウンに成功している。Drp1を分解した受精卵の発生能力を解析したところ、2-から4-細胞期にかけて顕著な発生停止が観察された。発生停止した胚のミトコンドリアの細胞内分布を調べたところ、ミトコンドリアが顕著な凝集塊を形成されることが明らかとなった。興味深いことに、小胞体の細胞内分布もミトコンドリアの凝集領域に集積していたことから、MAMの局在が異常となる可能性が示唆された。また、12か月齢以上の加齢雌マウスから採取した卵母細胞においても、Drp1を分解した卵母細胞と類似したミトコンドリアの凝集塊が観察されたことから、Drp1の枯渇に起因するミトコンドリアの凝集が卵母細胞の品質を低下させる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主要な目的の一つであるMAMの制御機構の一端が明らかとなった。また卵母細胞の品質低下のモデルとして解析した加齢卵母細胞においても、ミトコンドリアの動態が関与する可能性が示唆され、今後の研究の発展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
MAMの生理機能として、Ca2+を介したミトコンドリアと小胞体の情報伝達が、ミトコンドリアにおけるATPの生産やアポトーシスの調節に関与することが報告されていることから、令和3年度はミトコンドリアのCa2+ユニポーターであるmitochondrial calcium uniporter (MCU)の解析に取り組む。また12か月齢以上の加齢マウスを用いた解析では、排卵数に著しい減少が認められ、解析できる卵母細胞や受精卵が十分に得られない課題に直面している。過剰排卵法の再検討や受精卵を人為的に作製する顕微授精法の導入も検討している。
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