2020 Fiscal Year Research-status Report
外的環境と内的リソース蓄積をモニターするテトラピロールシグナル伝達系の解明
Project/Area Number |
20K06638
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小林 勇気 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (80644616)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 葉緑体 / テトラピロール / 細胞周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
単細胞藻類や高等植物の幹細胞では、オルガネラと核の分裂に至るプロセスには協調関係が見られる。申請者は、核のDNA複製はオルガネラDNA複製によって制御されており、葉緑体で合成されるテトラピロール分子の一種が、シグナルとして働いていることを明らかにした。また、オルガネラDNA複製の開始にもテトラピロールシグナルが関与することが判明している。申請者のこれまでの研究からオルガネラDNA複製を制御するテトラピロールシグナルの上流には光合成、呼吸、細胞内リソースの蓄積をモニターするチェックポイントが存在することが示唆された。そこで本研究では、オルガネラDNA複製のチェックポイントの分子機構を明らかにすることを目的とする。このチェックポイント機構を解析することで、外的環境変化および内的リソース蓄積の双方のシグナル伝達系を明らかにすることが可能だと考えられる。申請者の発表・未発表データからODR開始には、明条件・光合成・呼吸・適切な細胞リソースの蓄積の4つの条件が必要であること、これら4つの条件が揃うと、一過的なFHの蓄積、MAPKの活性化、ユビキチン化による特定タンパク質分解の3つの反応が起こりODRが開始されることが明らかになっている。本研究では1) 4つの条件と3つの反応の関連付け、2) MAPKとユビキチン化のターゲットの特定、3) 3つの反応に関わる因子同士の相互作用の解明を行うことでODR開始の分子機構を明らかにする。これらを解き明かすためにRNA-seq、酵母2ハイブリット(Y2H)、MS解析等の大規模解析によるスクリーニングと、個々の因子の機能解析のためにノックアウト・過剰発現株の作成・種々の生化学解析を行う。本年度は1)、2)について解析を行ったので報告する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ODR開始に必要な、明条件・光合成・呼吸・適切な細胞リソースの蓄積の4つの条件と、一過的なFHの蓄積、MAPKの活性化、ユビキチン化による特定タンパク質分解の3つの反応の内、ターゲットの特定されているFHの蓄積、MAPKの活性化について解析を行った。同調培養条件における明暗周期、呼吸・光合成の阻害下でのそれぞれの測定を行った。この結果、FH量は光や光合成活性に関係なく呼吸活性に依存して蓄積量が増加することが明らかになった。一方、MAPKの活性化は細胞内リソースが蓄積していない時期や光合成が阻害された状態では活性化されなかった。また、呼吸活性を阻害してもMAPKの活性は低下しなかった。これらの結果からFH蓄積は呼吸を、MAPKの活性化は細胞内リソースと光合成をモニターしていることが予測された。現在、これらの環境下でのRNA-seqの結果を解析している。これらの結果とODR開始時の遺伝子発現の差を明らかにすることで各条件と反応の支配下にどの様な遺伝子があるか特定中である。つぎに、ODR開始機構のキー因子であると期待されるFbx1のターゲットの探索を行った。探索はY2Hやプルダウン法によるMS解析では困難であった。そこでin vivoラベリング法を用いODR開始時に細胞内でFbx1近傍に存在するタンパク質のラベリングを行いMS解析による特定を行った。この結果、いくつかのFbx1結合因子をスクリーニングできた。これらの因子に対してFbx1とのY2Hを行い結合を確かめた。ODR開始にはDNA複製複合体が関与していることは間違いなく、これらの因子と得られたFbx1相互作用因子との結合をY2Hによって確かめた。その結果20程度のオルガネラDNA複製関連因子の内少なくとも4つはFbx1結合因子と相互作用が認められた。今後はさらなる生化学的解析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度我々が開発したin vivoラベリング法は化合物としてBiotin-phenolを用いた。Biotin-phenolはAscorbate peroxidases 酵素(APEX)とH2O2によりAPEXの近傍20 nmに存在するタンパク質のチロシン残基に結合する。我々はFbx1とAPEXの融合タンパク質を細胞内で発現させた株を作出することで、Biotin-phenol存在培地中で任意のタイミングでH2O2を添加し、ターゲット周辺タンパク質をラベル化する系を開発した。本系を利用することでODR開始時期特異的にFbx1に結合する因子の候補を特定した。しかし、バックグラウンドの高さや検出感度の低さなどの問題点も明らかになった。次年度は、系の改良を行い、さらなるFbx1相互作用因子の探索を行う。 さらに本年見出したFbx1結合候補の破壊株、過剰発現株、Tag融合株を作製する。これらについて明・暗、光合成・呼吸鎖・細胞内リソース蓄積の条件で、表現型の解析を行う。同様にRNA-seq解析も行い、転写産物との関連付けも行う。さらに得られた因子について抗体の作製も行い、より詳細な生化学的解析を行う予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] ESCRT machinery mediates cytokinetic abscission in the unicellular red alga Cyanidioschyzon merolae.2020
Author(s)
Fumi Yagisawa, Takayuki Fujiwara, Tokiaki Takemura, Yuki Kobayashi, Nobuko Sumiya, Shin-ya Miyagishima, Soichi Nakamura, Yuuta Imoto, Osami Misumi, Kan Tanaka, Haruko Kuroiwa and Tsuneyoshi Kuroiwa
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Journal Title
Front. Cell Dev. Biol.
Volume: 8
Pages: 169
DOI
Peer Reviewed
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