2020 Fiscal Year Research-status Report
Search for factors enabling intracellular symbiosis using a chlorella mutant that have lost symbiotic ability
Project/Area Number |
20K06640
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
洲崎 敏伸 神戸大学, 理学研究科, 理学研究科研究員 (00187692)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞内共生 / クロレラ / ミドリゾウリムシ / 細胞間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
原生生物ミドリゾウリムシParamecium bursariaの細胞内には数百のクロレラChlorella variabilisが共生している。このような共生関係は、二次共生の初期段階であると考えられ、細胞内共生機構を解明するためのモデルとして適している。これまでに、ミドリゾウリムシの側から共生の分子機構を調べた研究が多く報告されているが、今のところミドリゾウリムシ-クロレラの細胞内共生が成立し、さらにそれが維持される分子機構については全く分かっていない。そこで本研究では、研究の視点を変えて、クロレラ側からのアプローチによって、細胞内共生の分子機構を解明しようと試みている。今年度は、クロレラの細胞内共生に重要と思われるタンパク質p120についての生化学的・分子生物学的解析を行い、その遺伝子を同定することに成功した。p120はクロレラ細胞表層に存在し、宿主由来のPV膜(共生胞膜)と相互作用してクロレラのミドリゾウリムシへの共生に関連している可能性が示唆された。今後の展開としては、p120を含む細胞表層の微細構造観察や宿主側に存在が予想されるリガンドの探索などを行い、細胞内共生機構についてさらに理解を深めたい。また、同種のクロレラはミドリゾウリムシ以外にも様々な原生生物にも共生することが知られている。たとえば、ミドリラッパムシStentor pyriformisの細胞内にもこの種のクロレラが共生しているので、これを比較対象として同様な解析を行うことで、共生機構の必要十分条件を絞り込んでいきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、共生藻Chlorella variabilis NC64A株から重イオンビーム照射によりミドリゾウリムシへの共生能を欠く突然変異体(NC64A-#48)を作出した。この変異体は宿主の細胞には取り込まれるが、そのまま食胞内で消化・分解されてしまう。そこで、NC64AとNC64A-#48の細胞表層タンパク質を、サンプルバッファーでごく短時間処理することで抽出し、SDS-PAGEにより解析したところ、#48変異株では分子量120kDaのタンパク質が欠落していることがわかり、これをp120と名付けた。また、NC64A株とN64A-#48株のmRNA-Seq解析を行い、コンティグデータベースを作製した。そこから推定されたタンパク質のアミノ酸配列をレファレンスデータとして用い、SDS-PAGEで得られたp120タンパク質の質量分析を行ったところ、このタンパク質はvon Willebrand Factor(vWF)と高い相同性を持つ、3つのエフリンレセプター様ドメインを有するタンパク質であることがわかった。さらに、NC64A株とN64A-#48株の大核のドラフトゲノムデータも取得し、p120が#48株で発現していない理由を調べた。その結果、ゲノム配列に差は見られなかった。すなわち、NC64A-#48では何らかの理由でスプライシング異常が生じ、p120のmRNAが本来の配列ではなくなったことが、タンパク質発現異常の原因である可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、#48変変異株においてp120タンパク質がなぜ発現できていないのかを、ゲノム情報とトランスクリプトームデータを基に検討する。また、このタンパク質はvon Willebrand Factor(vWF)と高い相同性を持つことがわかったので、ミドリゾウリムシのPV膜に存在することが想定されるp120に対するリガンドの候補を探索する。このために、ミドリゾウリムシからPV膜を単離し、質量分析によってそこに存在するタンパク質の網羅的解析を実施する。質量分析のレファレンスデータとしては、過去の研究によって取得したミドリゾウリムシのmRNA-Seqデータが利用できる。 第2に、クロレラNC64A株とNC64A-#48株の細胞壁の糖鎖組成をレクチン等の結合性を指標として比較解析する。先行研究によりクロレラの細胞壁の糖鎖組成と微細構造がミドリゾウリムシへの共生により変化することがわかっているので、#48変異株での細胞壁の状態をそれと比較する。 第3に、この種のクロレラが共生することが知られているミドリラッパムシStentor pyriformisについて、細胞生物学的解析を実施し、クロレラ―ミドリゾウリムシ系との比較を行う。
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Research Products
(7 results)