2021 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜損傷の修復装置の分子構成・構造とそのシグナル制御機構
Project/Area Number |
20K06642
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
祐村 恵彦 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授(特命) (70183986)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 細胞膜 / 損傷治癒 / アクチン / Caイオン / カルモジュリン / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
皮膚の怪我など,組織レベルでの損傷治癒は日常的に経験するが,細胞レベルでも細胞膜の損傷を修復する機構が存在する。実際,外界の物理的・化学的ストレスによって,細胞膜の損傷はしばしば起こる。細胞膜は外界環境から細胞を守るとともに,細胞内の環境を維持しており,速やかに修復しなければ細胞成分が外に出て最終的に細胞は死ぬことになる。人における細胞膜修復機構の欠損は,多くの疾病の原因となっている。また,人為的に細胞膜に穴を開けて物質を導入するマイクロインジェクション法などの技術も,細胞の持つこの修復機構に依存している。本研究では,独自に開発した,細胞膜のみに正確な大きさの穴をあけるレーザーポレーション法をさらに改良しつつ,細胞膜に穿孔損傷を与え,その修復過程に形成される修復装置の分子構成,構造,シグナル制御機構を明らかにし,細胞膜修復機構の全体像を明らかにする。これらの研究成果は,関連疾病の治療に役立つだけでなく,高効率な細胞内への外来物質導入装置の開発にもつながると考えている。当該年度では,昨年度改良したレーザーポレーション装置を用いて細胞膜に直径0.5マイクロメートルの穴を開けて損傷を与え,その後に損傷部に集積するタンパク質を多く同定した。損傷治癒時にアクチンが損傷部位に集まること,アクチンの集積をアクチン脱重合材で処理した場合,外液に入れた蛍光色素の流入が止まらなくなることから,アクチンの集積は損傷治癒に必須である。アクチンの集積に関与するアクチン結合タンパク質を網羅的に調べた。GFPタグのついた様々なアクチン結合タンパク質を細胞に発現させ,全反射蛍光顕微鏡のもとでタンパク質を可視化し,これらがどのような経過で損傷部に集積するかについて明らかにした。また,これらのタンパク質の集積の時系列について明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で,いくつかの計画は遅れているが,新たな進展もあり研究はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
従来,カエル卵やショウジョウバエの胚のように,ミオシンがアクチンとともに損傷部で収縮環様の構造を作り収縮することで,損傷部の穴が閉じると報告されてきたが,少なくとも細胞性粘菌ではミオシンは損傷部から消失することが申請者の研究で明らかになった。上記の卵や胚とは異なるメカニズムであることが示唆される。本研究により,細胞膜が損傷時に,細胞外からのCaイオンの流入がトリガーになって,カルモジュリンなどが関与することが明らかになってきた。シグナルの最下流にアクチンの集積があると考えられるが,カルモジュリンを含めアクチンの集積の動態を制御するシグナルカスケードの全貌を今後明らかにしていきたい。コロナ禍で,計画していた急速凍結による電子顕微鏡観察の研究が滞っているが,その分多くの種類の分子の動態を観察する時間に当てるようにしたい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍で,学会発表が全てオンラインになったため,旅費の支出がなくなった。未使用額については,電子回路設計のための部品の購入に充て,装置の充実を 図りたい。
|
Research Products
(9 results)