2020 Fiscal Year Research-status Report
ヒト細胞と分裂酵母に共通する低ヘキソース環境順応メカニズムの解明
Project/Area Number |
20K06648
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
齋藤 成昭 久留米大学, 付置研究所, 教授 (30352123)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 分裂酵母 / ヒト細胞 / ブドウ糖 / ヘキソース / 栄養 / 飢餓 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「主要なエネルギー源であるヘキソースが、ヒト血糖値程度の低い濃度でしか存在しない環境に、真核細胞はどのような仕組みで順応するのか?」を核心的な「問い」として、「真核細胞が普遍的に備える、低ヘキソース環境への順応機構」の解明を目指す。その目的を達成するために、3年の研究期間で、分裂酵母モデルとヒト培養細胞モデルの両者を用いた遺伝子スクリーニングと、同定された遺伝子の機能解析を実施する。 分裂酵母ゲノムには約4500の遺伝子が存在しているが、それらを対象とした網羅的スクリーニングをした結果、分裂酵母細胞が低ヘキソース環境で増殖するためには約200の遺伝子が必要であった。このスクリーニングで同定された遺伝子変異体のうち、ミトコンドリア機能にかかわると予想されるについては、詳細な解析を実施し、その成果をOpen Biology誌に公表した。次いで、ヒトゲノムデータベースに対してホモロジー検索を行ったところ、それら200遺伝子のほとんどについてヒト相同遺伝子が見つかった。RNAi法を用いて、それら相同遺伝子を一つずつヒトHeLa細胞内でノックダウンし、その細胞がヘキソース飢餓環境下で増殖できるか否かを検討したところ、約40遺伝子がヘキソース飢餓環境での細胞増殖に必要であることが判明した。それらの遺伝子は、ヒトと分裂酵母の両方において低ヘキソース環境の増殖に必須であり、それゆえ、本研究が目的とする「普遍的な順応機構」にかかわっているものと考えている。現在、それらの遺伝子の機能解析をHeLa細胞と分裂酵母を用いて実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響をうけて研究活動がやや不自由であったものの、当初の予定通り、ヒトHeLa細胞を用いたスクリーニングを完了させることができたため、計画は順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
低ヘキソース環境下での細胞増殖に必要な遺伝子のうち、ヒトと分裂酵母で共通する約40の遺伝子について、その生理機能の解析を行う。そのための有力な解析ツールとしてCRISPRi法が利用可能であることを実証し、その成果をG3誌に報告している。我々がこれまでに行ってきた解析によると、分裂酵母細胞においては、ヘキソース輸送体の機能やミトコンドリア機能が適切にコントロールされることが、低ヘキソース環境での増殖に必要であることがわかっている。ヒト細胞においても、これら40遺伝子がそのような機能のコントロールに関与しているものと予想し、その可能性を検証する予定である。
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Causes of Carryover |
学会出張計画の変更、および実験計画の一部変更により、当初予定額より支出が下回り、次年度使用額が生じた。翌年度分として合わせて請求し、消耗品費などに充当する計画である。
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