2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒト細胞と分裂酵母に共通する低ヘキソース環境順応メカニズムの解明
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20K06648
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
齋藤 成昭 久留米大学, 付置研究所, 教授 (30352123)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 栄養飢餓ストレス / 分裂酵母 / ヒト培養細胞 / グルコース飢餓 / 遺伝子スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「主要なエネルギー源であるヘキソースが、ヒト血糖値程度の低い濃度でしか存在しない環境に真核細胞はどのような仕組みで順応するのか?」を核心的な「問い」として、「真核細胞が普遍的に備える低ヘキソース環境への順応機構」の解明を目指す。分裂酵母モデルを用いた網羅的遺伝子スクリーニングの結果に基づき、ヒト培養細胞(HeLa細胞)を対象とした遺伝子スクリーニングを昨年度実施し、約40の遺伝子がヒト細胞のヘキソース環境への順応に必要であることを明らかにした(以下lgs遺伝子とよぶ)。これらの40遺伝子はヒトと分裂酵母の両者において低ヘキソース順応に必要であり、したがって、これらの遺伝子機能を解析することにより、真核細胞が普遍的に備える低ヘキソース環境順応機構が解明できるものと考えた。 昨年度、分裂酵母のlgs遺伝子のうち6つがミトコンドリア機能に関わっていることをOpen Biology誌に報告した。同様に40のヒトlgs遺伝子のうちのいくつかがミトコンドリア機能維持に関わっているだろうと予想し、本年度はその可能性を検討した。lgs遺伝子をHeLa細胞内でRNAi法によりノックダウンした後、ミトコンドリア膜電位依存的蛍光色素を用いて膜電位を測定した。その結果、5つのヒトlgs遺伝子について、ミトコンドリア機能への関与が示唆された。 また本年度は、分裂酵母lgs遺伝子であるTORC2シグナル経路遺伝子の機能についても進展が見られた。TORC2シグナル経路はグルコース輸送体の正常な細胞内局在維持に必要であるが、このシグナル経路がアレスチン分子の機能制御を介してグルコース輸送体の液胞輸送をコントロールしていることを明らかにし、JCS誌に成果を報告した。同様の仕組みがヒト細胞でも働いているのかについて今後、検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
依然として続くコロナ禍のため研究活動にやや不自由が生じているものの、概ね当初の予定通りヒトlgs遺伝子と分裂酵母lgs遺伝子の機能解析を実施し、結果が得られたため、上記のように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で明らかにした「進化的に保存された40のlgs遺伝子」について、引き続き機能解析を行う。これらの遺伝子産物がグルコース輸送体の細胞内局在や輸送活性のコントロールに関与している可能性について、とくに重点を置いて検討を進める。
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Causes of Carryover |
学会出張計画の変更および実験計画の一部変更により、当初予定額より支出が下回り、次年度使用額が生じた。翌年度分として合わせて請求し、消耗品費などに充当する計画である。
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