2021 Fiscal Year Research-status Report
多能生幹細胞を用いた心肺連携オルガノイド作製技術の開発
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20K06652
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
李 知英 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 准教授 (20402860)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 心臓オルガノイド / 多能性幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では動物の個体発生に重要な臓器新生(Organogenesis)を試験管内で再現する方法を確立する目的で自己組織化のシグナル経路解明によるヒト多能性幹細胞からの心肺連携オルガノイド作製技術を完成させるとともに、遺伝子発現、組織学、微細構造解析などにより有効なオルガノイド性質評価系の構築を試みた。 マウスES由来心臓オルガノイド作製技術を基盤にヒトES細胞由来心臓オルガノイド作製を試み、成功した。特に、FGF4シグナルだけではなくマウス胎児の心臓で発現するBMP10を添加することで形態変化の精度が高い心臓オルガノイドを作製できた。これらの心臓オルガノイドは胎児型心臓に形が類似していて、蛍光免疫染色によって心筋細胞のマーカーを発現していることが明らかとなった。これらのヒトES由来心臓オルガノイドはNaイオンチャネルタンパク質とCaイオンチャネルタンパク質を持つだけではなく、Na電流とCa電流が確認され、各電流のパターンは生体の心臓に極めて似ていることが明らかとなった。その他にもHERGやIK1チャネルの発現が確認されたことからヒトES由来心臓オルガノイドは心臓の電気生理学的性質を総合的に再構築したものであると考えられる。 さらに、ヒト多能性幹細胞からの心肺連携オルガノイド作製技術を確立するためには、マウス生体における肺発生のシグナル因子の中のFGFシグナルと、そのシグナルの働きを干渉する阻害剤を用いて、試験管内で心臓と肺の発生を試み、ROCK阻害剤が肺オルガノイド作製に重要であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスES細胞由来心臓オルガノイド作製技術を基盤にFGF4シグナルだけではなくマウス胎児の心臓で発現するBMP10を添加することでヒトES細胞から形態変化の精度が高い心臓オルガノイドを作製できた。これらの心臓オルガノイドは胎児型心臓に形が類似していて、蛍光免疫染色によってMlc2a, Mlc2vなどの心筋細胞のマーカーを発現していることが明らかとなった。特に心臓の機能に重要な役割を果たすイオンチャンネルについてPatch clamp解析で、これらのヒトES細胞由来心臓オルガノイドに置いてNa電流とCa電流が確認された。 これらの心臓オルガノイドを用いてより詳細な評価を行い、ヒト心臓オルガノイドにおいてCx43, Cx40などのGap Junctionタンパク質やNa, Ca, HERG, IK1チャネルタンパク質が発現することを明らかにした。また、薬剤毒性評価やdrug screeningなどの心臓オルガノイドの技術的応用については、ヒト心臓オルガノイドを用いてHERG trafficking inhibition assayを行い、ペンタミジンによるHERG trafficking阻害が確認できた。さらに、高速カメラによる心筋収縮解析から心臓オルガノイドにおいて収縮と弛緩が確認された。 また、肺および心肺オルガノイド作製条件検討に用いたROCK阻害剤はヒト多能性幹細胞由来オルガノイドにおいて心臓だけではなく肺発生も促進することと組織学的解析により肺オルガノイドは肺特異的転写因子と気管上皮マーカーを発現することが分かったので、当初の計画どおり「ヒト多能性幹細胞由来の心肺オルガノイド作製に有効な自己組織化シグナル経路の探索及びヒトiPS由来肺オルガノイドの評価 」を達成できたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果で得られたヒト多能性幹細胞由来肺および心肺オルガノイド作製条件を最適化すると共にこれらのオルガノイドにおいて総合的評価を行う。具体的には、最適条件で作製された心肺オルガノイドを用いてRNA-seq(次世代シーケンシング)解析を行い、網羅的遺伝子解析を用いた心臓と肺関連遺伝子のプロファイルの作成し、生体臓器との比較を行う。 また、 電子顕微鏡を用いた微細構造解析によって作製された肺オルガノイドが、I型肺胞上皮細胞、II型肺胞上皮細胞や肺機能に重要な界面活性物質を分泌するクララ細胞など肺特異的細胞の微細構造を持つか調査し、肺発生におけるWnt2, Wnt7bの役割を調べる。 さらに、ヒトES細胞由来心臓オルガノイドの成熟度を向上させるための方法として、Wntシグナルを抑制する小分子阻害剤の役割を検証し、脂肪酸による心筋細胞の成熟を試みる。この方法で作製された心臓オルガノイドの形態、微細構造、収縮解析などの機能的評価をこれまで確立された実験系を用いて行う。
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Causes of Carryover |
学会はオンラインでの参加であったため、旅費の使用が無く、その他の使用が少なかったため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(3 results)