2020 Fiscal Year Research-status Report
Study of the mechanism of induced graying by blocking blood flow and development of new methods for prevention and treatment of hair graying
Project/Area Number |
20K06657
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
松崎 貴 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (90241249)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 白髪化 / 一酸化窒素 / 血流 / 虚血 / メラニン合成 / 毛周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、マウスの皮膚を一部切開してリング式血管圧迫装置を挿入して4~6時間圧迫すると、毛周期の成長期に圧迫した時のみ白髪化し、休止期では白髪化しないことがわかっていたことから、WAX脱毛により人為的に成長期を誘導し、その後の毛周期の各ステージで血流遮断した後の白髪化の度合いを調べた。その結果、成長期初期の誘導後3日から成長期終期の10日後までいずれの時期でも白髪化がみられたが、とくに白髪化を起こしやすい高感受性ステージは見つからなかった。 一方で、白髪化に個体差がみられたことから、皮膚切開が結果に影響した可能性を考え、つまみ上げた皮膚を両側から半円形ネオジウム磁石で挟むことにより、皮膚を切開することなく血管を圧迫する方法を新たに考案して実験したところ、白髪化が起こることを確認した。しかしリング式血管圧迫法と違い、白髪化に6時間以上の圧迫が必要であった。また、血流が完全に停止するような強い圧迫より、血流が抑制される程度の比較的弱い圧迫のほうが白髪化の度合い高かった。このため、血管圧迫による虚血状態および再灌流時に大量に発生すると考えられる活性酸素や一酸化窒素が白髪化を誘起するのではないかと考え、メラニン合成能を持つB16メラノーマ細胞を用いて、一酸化窒素の影響を検討した。B16細胞をシスプラチン処理して増殖を抑制した状態で、一酸化窒素の供給源となるニトログリセリンを0.2~2mM投与したところ、いずれの濃度でも96時間後のメラニン合成量が低下した。さらに、頬髭の器官培養系にニトログリセリンを投与する実験でも0.2mMで色素細胞の分化が抑制された。一方で、ニトログリセリン含む貼付剤で直接皮膚に投与する方法では白髪化は確認できなかった。これらの結果は、白髪化の誘導に局所的な一酸化窒素発生が関与することを示唆するものの、それだけでは不十分であることを示してものと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、1)白髪化が起こる毛周期ステージや血流停止時間を明らかにすること、2)血流遮断時間を変えたり、間欠的に遮断したりすることで、白髪化を最も誘発する血流停止条件を探ること、3)白髪化を誘発する因子の目星をつけることを目的に実験を行う計画であった。1)に関しては、白髪化を誘導するためにリング式血管圧迫法を用いて、Wax脱毛による成長期誘導後の時間を追って、一定時間血流を遮断した後の白髪化の度合いを調べてみたが、白髪化が起こる毛周期ステージは見つからなかったことで、メカニズム解明のターゲットが絞りにくくなった。また、個体差が大きかったことから、新たに磁石式の血管圧迫法を開発した。磁石式血管圧迫法でも白髪化誘導できるものの、血管圧迫時間を長くする必要があることや白髪化の度合いが低かったことから、さらなる改善が必要であるが、リング式血管圧迫法とともに白髪化メカニズムの解明に有用であると考えられる。2)に関しては、リング式血管圧迫法では白髪化の度合いに個体差が大きかったものの、3時間以内の血流遮断では白髪化の誘導が難しいこと、9時間以上の血流遮断では皮膚の壊死が始まることがわかった。さらに、虚血-再灌流の影響を増強するため間欠的に血管圧迫と開放を繰り返して長時間処理してみたものの、白髪化が促進されることはなかった。3)に関しては、B16メラノーマ細胞を用いて一酸化窒素の作用を調べる実験を行った結果、一酸化窒素がメラニン合成に影響する可能性があることがわかったが、マウス皮膚に投与する方法では白髪化が誘導できなかった。 以上のように、当初の予定を一部変更して新たな白髪化モデルマウスを開発したり、実験手法を変更したりする必要性が出てきたものの、概ね予定通り研究が進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
血管圧迫により誘導された白髪では、毛髪中に少量のメラニンが疎らに存在するなど、自然に発症する白髪とよく似た性状を示すことから、老化に伴う白髪化のメカニズム解明に大いに役立つと考えられる。とくに、皮膚切開を必要としない磁石式の血管圧迫法は簡便な白髪化誘導方法として有望であるため、より短時間で効率よく白髪化できる条件や装置の改良を試みる。血流が完全に停止するような強い圧迫より、血流が抑制される程度の比較的弱い圧迫のほうが白髪化の度合い高かったことから、微小領域の血流量変化を正確に把握しながら白髪化誘導との関連性を評価することが重要と考え、適切な血流測定方法を確立することを目指す。白髪化の誘発因子の解明では、培養細胞に対する一酸化窒素の関与が示唆されたが、個体レベルの実験では白髪化を誘導しなかったことから、活性酸素の作用や一酸化窒素との相互作用を念頭に、細胞レベルと個体レベルの実験を行い、白髪化との関連を明らかにする。具体的には、皮膚真皮層に5-アミノレブリン酸あるいはレザフェリンを注入後、長波長光を照射することで局所的に活性酸素を発生させたり、一酸化窒素を放出するニトログリセリンや硝酸イソソルビドを同時に投与したりして、局所的に白髪化が誘導できるか検証するとともに、活性酸素スカベンジャーであるアスコルビン酸、N-アセチル-L-システイン等を皮膚真皮層に注入後、血流遮断を行い、白髪化が抑制できるかを調べる実験を行う。さらには、一酸化窒素合成酵素の阻害剤やsiRNAを導入した阻害実験を実施し、白髪化のメカニズムについて総合的に検証する。
|
Causes of Carryover |
試薬等の購入に不十分な小額の残金であったため、次年度使用額と合わせて執行する。
|
Research Products
(1 results)