2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of Neurod1-expressing cells druing pancreatic beta cell regeneration
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20K06660
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松田 大樹 立命館大学, 生命科学部, 助教 (60801363)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 膵β細胞 / Neurod1発現細胞 / 細胞系譜 / 再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内で唯一血糖値を低下できるホルモン(インスリン)を合成・分泌する膵臓ランゲルハンス島β細胞(以降、β細胞)は集合体を形成し、グルコース恒常性の維持において中心的な役割を果たす。しかしながら我々哺乳類はβ細胞集合体の再生能が低いため、β細胞数が減少すると糖尿病を発症してしまう。一方、同じ脊椎動物であっても硬骨魚類ゼブラフィッシュは生涯を通じこの集合体を再生することができる。申請者はβ細胞集合体の再生過程でこれまで知られていなかったβ細胞の主要な供給源と思われるNeurod1発現細胞(以降、N1細胞)を先行研究で見出した。本研究は、このN1細胞のβ細胞集合体の再生における正確な役割とこの細胞からどのようにして新たなβ細胞が再生してくるのかその細胞分子メカニズムの明らかにすることを目的にしている。 この目的のために、令和2年度に、かつてN1細胞であった細胞を追跡できるシステム、neurod1:Cre/ insulin:loxp-mCherry-loxp-eGFPトランスジェニック(TG)系統とneurod1:CreERT2/ insulin:loxp-mCherry-loxp-eGFP TG系統を作製した。当該年度(令和3年度)はβ細胞を破壊した後の、これらTG系統と他の膵島構成細胞内で蛍光タンパク質を発現するTG系統の表現型解析を行った。 その結果、再生してきたβ細胞はすべてN1細胞から生じることが明らかとなった。また、ゼブラフィッシュのβ細胞集合体は、膵島内に存在するN1細胞を用いてまず通常よりβ細胞数が少数の状態で機能を回復させ(機能の再生期)、血糖値が正常なると、新たに不足したN1細胞を作り直し、このN1細胞を用いβ細胞数をもとの状態まで回復させる(形態の再生期)ことが明らかになった。 現在、これらをまとめた論文を投稿し、リバイスの実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、作製に成功したneurod1:CreERT2/insulin:loxp-mCherry-loxp-eGFP系統を用い、β細胞集合体再生時の表現型解析を行い、新生してきたβ細胞におけるN1由来細胞の占有率を算出し、N1細胞のβ細胞の再生への寄与を明確にすることを計画していた。 その占有率は多くてもせいぜい80から90%程度になると予想していたが、その予想を上回りすべてのβ細胞(100 %)がN1細胞から生じることが明らかとなった。この他にも、β細胞の再生が機能と形態を段階的に再生していることや、少なくとも2種類の細胞系譜が異なるN1細胞が寄与しており、それぞれ集合体の機能の再生と形態の再生に使われるなど、予想を上回る興味深い結果を得ることに成功した。 本研究の主たる目的はβ細胞集合体再生の新規細胞分子機構を明らかにすることにあり、今後の分子機構の研究の基盤となる細胞機構が明確になったことからおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、形態の再生期に形成される新たなN1細胞の源となる細胞の特定を行いたい。申請者は膵島の新生過程の源となる腺房中心細胞など膵管組織がN1細胞の源の細胞と予想しており、まず、かつて腺房中心細胞だった細胞を追跡できるneurod1:CreERT2/insulin:loxp-mCherry-loxp-eGFP系統を用い腺房中心細胞の形態の再生期の寄与を明確にする。
また機能の再生期ならびに形態の再生期に関わる分子経路をRNA-seqを用いて特定し、機能の再生期のN1細胞からβ細胞が関わる分子群と形態の再生期のN1細胞形成に関わる分子群を明らかにする。興味深い発現を行う遺伝子については機能解析を行い、これら遺伝子がβ細胞集合体の再生過程でどのような役割を行っているのか明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
当該年度に、投稿論文の投稿料と蛍光実体顕微鏡のフィルター費に助成金を使用する予定だった。しかしながら、投稿論文については年度内アクセプトされず、当該年度内に使用できなかった。また、蛍光実体顕微鏡のフィルターについては、ロシアのウクライナ軍事侵攻のため、空路の輸送が制限されたため、年度内の納品の予定だったが延期されできなくなった。そのため次年度使用額が生じた。
当該年度に、投稿した論文に関しては現在リバイス中であり、次年度前半にはアクセプトされる予定である。蛍光実体顕微鏡のフィルターについては次年度初頭に納品される予定である。そのため、次年度使用額は当初の予定通り、投稿論文の投稿料と蛍光実体顕微鏡のフィルター費用として使用するつもりである。
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