2020 Fiscal Year Research-status Report
力学刺激が活性化するプロテインキナーゼ群による初期胚外胚葉の間葉上皮転換様制御
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20K06663
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
木下 典行 基礎生物学研究所, 形態形成研究部門, 准教授 (30300940)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | タンパク質リン酸化 / プロテインキナーゼ / タイトジャンクション |
Outline of Annual Research Achievements |
初期発生においては、ダイナミックな形態形成運動により、物理的な力が生じている。その力は、胚の細胞によって感知され、細胞応答を誘導することで、発生過程に影響を及ぼしていることがわかってきた。私は、アフリカツメガエル原腸胚の外胚葉にストレッチ刺激を与えるとタンパク質リン酸化に大きな変化が現れることを、質量分析によるリン酸化プロテオミクス解析により見出した。その中でもタイトジャンクションの構成タンパク質のリン酸化が大きく変化していた。さらにそのような物理刺激が、外胚葉の強靭性を高めることで正常な発生に寄与していることも明らかにした。本研究では、機械刺激によってリン酸化状態が変化するタンパク質として、タイトジャンクション構成タンパク質の一つであるZO-1タンパク質に着目した。ZO-1タンパク質は、刺激によりリン酸化されるのと同時に、細胞内局在も変化することがわかった。すなわち、刺激前は細胞質で顆粒状に存在し、刺激によりタイトジャンクションへと移行する。興味深いことに、ZO-1の細胞質顆粒は、液液相分離 (LLPS) によって形成されることも確認された。同様なZO-1細胞質顆粒とその局在変化は、アフリカツメガエル胚だけでなく、マウス胚や培養細胞系でも観察された。現在、ZO-1リン酸化が、力学刺激に応答しての細胞質からタイトジャンクションへの局在の変化やLLPSに対して与える影響のメカニズムの解明と、ZO-1タンパク質リン酸化を制御するプロテインキナーゼの同定を目指して研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ZO-1について、力学刺激の有無によって異なるリン酸化状態を示すZO-1上のアミノ酸部位を、質量分析解析により10数カ所同定した。現在、ZO-1のリン酸化の変化と、タイトジャンクションへの局在変化、LLPSとの関係を明らかにするため、ZO-1上で同定したリン酸化部位の変異遺伝子を作成している。アミノ酸は、セリン・スレオニンからアラニンヘの置換と、グルタミン酸への置換の両方を作成しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
現在作成しているZO-1のリン酸化変異遺伝子が完成したら、これらを、アフリカツメガエル胚および培養細胞で発現させ、力学刺激に対する反応やLLPSへの影響を調べることにより、各リン酸化サイトのリン酸化の意義を明らかにする。さらに、明らかになった、重要なアミノ酸サイトについては、それを担うプロテインキナーゼ・プロテインホスファターゼを同定する実験を行う。このため、様々なプロテインキナーゼホスファターゼに対する阻害剤を処理し、リン酸化状態の変化を質量分析で調べる。また、周辺のアミノ酸配列と各酵素のコンセンサス配列を比較するモチーフ解析により、酵素の候補を絞り込むことも計画している。このようにして同定したプロテインキナーゼについて、力学刺激応答における活性制御機構を明らかする。さらにZO-1のLLPSについては、リン酸化と天然変性領域(intrinsic disordered region)の性質を明らかにすることにより、リン酸化によるLLPS制御機構を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
当該年度は多額の経費が必要でない、プラスミドコンストラクションなど分子生物学的な実験が中心であった。次年度から、タンパク質レベル、細胞レベルの実験多くなり、そのため多くの経費が必要となるため、次年度使用額を多くした。
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