2022 Fiscal Year Research-status Report
力学刺激が活性化するプロテインキナーゼ群による初期胚外胚葉の間葉上皮転換様制御
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20K06663
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
木下 典行 基礎生物学研究所, 初期発生研究部門, 准教授 (30300940)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プロテインキナーゼ / 力学刺激 / 初期胚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で注目する主要なタンパク質の一つであるZO-1はタイトジャンクションに局在する細胞質タンパク質である。我々は、ZO-1が力学刺激におけるリン酸化の標的であること、また、その局在が液液相分離(LLPS)により制御されていることを報告した(Hashimoto, Kinoshita et al., Cell Systems 2019, Kinoshita et al., Cell Reports 2020)。マウスの3.5日胚(E3.5)は子宮に送られ、子宮上皮と相互作用しながら着床過程を進行させる。E3.5からE4.5にかけての栄養外胚葉において、タンパク質ZO-1の局在が、力学刺激によりダイナミックに制御されていることを報告した(Kinoshita et al., iScience 2022)。マウス胚の着床過程では、この栄養外胚葉が子宮内膜上皮と接触することにより上皮間葉転換を起こす。また、子宮内膜上皮は形態変化をおこして胚を包み込む。このようなダイナミックな変化は胚と子宮上皮組織、あるいは子宮上皮組織同士の接触による制御が重要であると考えられる。そこで我々は、これらの組織同士の接触によるシグナル伝達のしくみを解明するため、胚と上皮組織の表層に局在するタンパク質の質量分析による同定を進めた。その結果、組織同士の力学刺激における膜貫通受容体型プロテインキナーゼを同定した。さらにその下流には別のプロテインキナーゼが活性化することを見出し、子宮内での着床過程において、接触刺激によるプロテインキナーゼ・カスケードの活性化が確認できつつある。現在、このプロテインキナーゼの活性化メカニズムを解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標としていたプロテインキナーゼの同定をほぼ達成した。その活性化メカニズムを2023年度に解析することで研究をまとめたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で発見した膜貫通受容体型プロテインキナーゼと、その下流のプロテインキナーゼに関しては、阻害剤が入手可能である。そこで、着床の始まる前の子宮にこれらの阻害剤を注入し、胚ー子宮内膜上皮間の変化や内膜上皮自身の形態変化への影響を調べることで、プロテインキナーゼの役割を明らかにする。また、我々は胚と子宮内膜上皮のin vitro培養系を確立しつつあり、これらプロテインキナーゼの活性化と力学刺激の関係を解析する予定である
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Causes of Carryover |
2022年度は質量分析データ解析など比較的経費のかからない実験が多かったが、2023年度は複数のプロテインキナーゼ阻害剤やマウス組織の免疫染色による解析に用いる抗体など、多くの高価な試薬が必要であり、それらの購入に使用する。
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Research Products
(1 results)