2023 Fiscal Year Annual Research Report
力学刺激が活性化するプロテインキナーゼ群による初期胚外胚葉の間葉上皮転換様制御
Project/Area Number |
20K06663
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
木下 典行 基礎生物学研究所, 初期発生研究部門, 准教授 (30300940)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マウス / 子宮 / 上皮細胞 / プロテインキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス胚盤胞の着床過程において、子宮内膜上皮細胞はダイナミックな形態の変化を起こすことを見出した。この過程では、内腔という空間が開いた状態から、胚盤胞が子宮内腔上皮に接触することにより、胚を包み込むようにして空間が狭くなり、最終的に胚を完全に包み込む「子宮内腔閉鎖」が起きることを観察した。この過程でのプロテインキナーゼを同定するため、質量分析による子宮内腔上皮細胞のタンパク質の解析を行ったところ、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)とインテグリンが内腔上皮細胞表層にエンリッチしていることがわかった。EGFRは細胞内ドメインにプロテインキナーゼをもち、インテグリンは細胞内でfocal adhesion kinase (FAK)などのプロテインキナーゼを結合することが知られている。EGFRとその下流のERKキナーゼ、FAKに関しては、活性化されると自身がリン酸化されることが知られており、それを認識する抗体によって、そのリン酸化状態を知ることができる。そこで、着床過程におけるこれらプロテインキナーゼ群のリン酸化状態を免疫染色法により調べたところ、3つのキナーゼとも、着床過程で強くリン酸化が起こっていることが明らかとなった。また、子宮内腔閉鎖の過程では、上皮細胞同士が接触するが、この接触の起きる部位で特にリン酸化の度合いが高いことが観察された。このことから、接触という力学的な刺激が、EGFR、ERK、FAKというプロテインキナーゼを活性化し、子宮内腔上皮の形態変化を制御していることがが示唆された。そこで、これらのプロテインキナーゼの阻害剤を子宮内にインジェクションして、上皮の形態を観察したところ、内腔閉鎖が阻害されることが明らかになった。これらのことから、これらのプロテインキナーゼ群が、子宮と胚や子宮上皮同士の力学刺激を検知し、上皮組織の形態を制御していることが示唆された。
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