2020 Fiscal Year Research-status Report
マウス大脳皮質発生過程でのCa2+依存的低濃度Shhシグナル伝達経路の解明
Project/Area Number |
20K06674
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
元山 純 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (70321825)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マウス胚 / 神経幹細胞 / 細胞分裂分化 / 細胞内Ca2+シグナル / イオンチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の神経前駆細胞は、発生過程において時々刻々性質を変えることで多様な神経細胞やグリア細胞を生み出す。しかし神経前駆細胞の経時的な状態変化の実態については未知である。細胞内Ca2+シグナルは分裂、分化、細胞間相互作用等の様々な状態変化に応じて変動するセカンドメッセンジャーである。本研究では、Ca2+イメージングを用いてマウス胚大脳皮質の発生過程での細胞内Ca2+濃度変動を記録し、神経前駆細胞の細胞分裂・分化とCa2+濃度変動パターンの関係の解明を目的とする。細胞内Ca2+濃度変動パターンが神経前駆細胞や中間前駆細胞のそれぞれの状態を反映している、との仮説を立て以下の実験計画を立てた。 I.VZ中で観察される自律的Ca2+濃度変動を示す細胞1つ1つについて細胞種を同定する。(例;分裂中神経前駆細胞、分化決定した神経前駆細胞、中間前駆細胞) II.細胞内Ca2+濃度変動パターンを人為的に操作し、神経前駆細胞もしくは中間前駆細胞の発生運命(細胞分裂や分化)に与える影響を調べる。 現在までに研究計画I.について、マウス胚大脳皮質から得た細胞を対象に、Ca2+濃度変動パターン記録と免疫染色による細胞種同定を行った。神経前駆細胞の同定には抗Pax6抗体と抗Tis21抗体を用い、Pax6陽性:Tis21陰性の細胞を分裂状態の神経前駆細胞、Pax6陽性:Tis21陽性の細胞を分化決定後の神経前駆細胞と同定し、個々の細胞の状態(分裂中の神経前駆細胞、分化決定後神経前駆細胞、中間前駆細胞)毎に、記録できた自律的Ca2+濃度変動パターン(振幅、周期、波形)をグループ分けし解析した。その結果、分裂中の神経幹細胞ではCa2+濃度変動が生じていないこと、分化決定後の神経前駆細胞でCa2+濃度変動が発生し始めること、そのCa2+濃度変動パターンは分化が進むにつれて変化することを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
設定した研究計画I.については実験を実施し、概ね結論を得ることができた。研究計画に記載していたIn vivoの実験:Gadd45g::d4Venus トランスジェニック(Tg)マウスを用いて胚脳スライスを対象に自律的Ca2+濃度変動パターン記録と細胞種同定を同時に行う計画については、Ca2+蛍光指示薬のCaTM-2AMによる細胞内 Ca2+濃度変動の検出感度がFluo4に比して低く、十分なCa2+濃度変動パターン記録ができないことがわかった。よってGadd45g::d4Venus トランスジェニック(Tg)マウスを用いる実験は継続しないことに決定し、in vitroでの解析に注力した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究計画I.で明らかになった、分化決定後の神経前駆細胞でCa2+濃度変動が発生し始めることについて、その生理的な役割を検討する。具体的にはCa2+濃度変動が発生し始めるにあたり、変動に関わるイオンチャネルの同定、そのイオンチャネルの阻害による細胞分化への影響を解析する。さらに研究計画II.細胞内Ca2+濃度変動パターンを人為的に操作し、神経前駆細胞もしくは中間前駆細胞の発生運命(細胞分裂や分化)に与える影響を調べる実験へと進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による大学院生の大学への出講制限があり、設備投資による高額の支出は今年度は行わなかった。しかし研究活動は継続しており次年度での支出によって設備投資を行う。
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