2021 Fiscal Year Research-status Report
ギャップ結合による多能性幹細胞の長期間維持機構の解明
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20K06677
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Research Institution | Tsuyama National College of Technology |
Principal Investigator |
柴田 典人 津山工業高等専門学校, 総合理工学科, 教授 (60402781)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 分化全能性幹細胞 / プラナリア / 再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
淡水産の扁形動物である日本産プラナリアのナミウズムシは、体を断片化されても全ての断片が新たな個体へと再生する。この高い再生能力は、身体中に存在する分化全能性幹細胞である新生細胞によって支えられている。新生細胞は、再生過程や恒常性で必要とされる全ての分化細胞を供給する一方で、体内で厳密に維持される必要がある。我々が用いているプラナリアは1991年に当時姫路工業大学の教授であった渡辺憲二先生によって樹立された個体再生を利用した無性生殖だけで維持されているクローン系統である。このように30年を超える期間、新生細胞はその全能性と集団を維持され続けているが、その分子メカニズムに関しては、いまだに不明である。 最近、我々はマウスのガン細胞の転移に関係することが知られているヒストン脱アセチル化複合体の構成タンパク質(MTA)のプラナリア相同遺伝子(DjMTA-A、DjMTA-B)がギャップ結合を介して新生細胞の維持に関係している可能性を見いたした。通常個体では新生細胞は体全体の間充織空間に広く分布している。一方、DjMTA-A、-BのRNAiによる機能阻害個体では新生細胞が間充織の特定の場所で枝状に存在するようになり、再生不全が起こった。さらにMTAのRNAi個体ではギャップ結合に必要とされるイネキシン(inx-B)の発現が上昇することも明らかとなった。これらの結果は、MTAはinx-Bを介したギャップ結合を調節することにより新生細胞の全能性を維持していることを示唆している。 実際にMTAがinx-Bの発現を低下させることによって再生に寄与しているかどうかを明らかにするために、MTA遺伝子とinx-B遺伝子の2重RNAiを行った。その結果、MTA遺伝子で見られる再生不全が解消された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス蔓延のため、遠隔授業期間が2回あり実験を中断せざるをえなかった分、進捗が遅れている。具体的にはMTA-A、MTA-BのRNAiによる機能阻害個体におけるシングルセルRNA-seq解析を予定していたが、実施できていない。ただし、MTA遺伝子の機能阻害個体における新生細胞の局在の変化が、実際にギャップ結合を介しているのか、については、MTA遺伝子とinx-Bとの2重RNAiを実施し、再生能力と新生細胞の局在の回復を確認し、おそらくギャップ結合を介していることを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる今年度は、inx-Bの発現パターンをin situハイブリダイゼーションで確認し、新生細胞での発現と、その他の分化細胞での発現の有無を確認する。また、MTA-A、MTA-BのRNAi個体で局在の変化した新生細胞は、全能性を強制的に維持されていると考えられることから、全能性因子を多く含むことが期待される。そこで、シングルセルRNA-seqを行い、正常個体の新生細胞の遺伝子発現と比較することで、全能性の維持に必要な遺伝子セットを明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス蔓延による遠隔授業期間中、実験の進捗に遅れが生じた。特にシングルセルRNA-seqが計画通りに行えていないために、その分の予算が次年度使用額として生じた。
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Research Products
(2 results)