2022 Fiscal Year Annual Research Report
植物水ストレス応答におけるB2/B3-Rafプロテインキナーゼ活性化機構の解明
Project/Area Number |
20K06680
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
竹澤 大輔 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20281834)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 植物 / 乾燥 / プロテインキナーゼ / プロテインホスファターゼ / アブシジン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は土壌や組織の水ポテンシャル低下(高浸透圧)を感知して植物ホルモンアブシジン酸(ABA)を合成して蒸散を防いだり、ABAとは独立の経路で細胞の保護に働くタンパク質遺伝子を発現し、脱水による細胞の傷害を防いでいる。ABAを介した浸透圧センシング機構には、RAFプロテインキナーゼARKが関わっていることがヒメツリガネゴケ変異株の遺伝子解析から明らかにされてきたが、ARKの調節機構については不明な点が多く残されている。 我々は、最終年度においてETR様センサーヒスチジンキナーゼ(HK)がARKとin vivoで相互作用することを見出し、HKがARKSer1029のリン酸化に必須であることを明らかにした。また、HKとARKの相互作用によりABA応答が部分的に抑制されることを報告した。酵母を用いた相互作用解析では、HKはARKポリペプチドの非キナーゼ領域にある「EDRドメイン」付近と結合することがわかった。 最終年度は、ARKの自己リン酸化を負に制御する因子についても解析を進めた。ARKの活性は野生型株とグループAプロテインホスファターゼ(PP2CA)欠損株で大きな違いがなく、PP2CA以外の負の制御因子の存在が示唆された。そこで、PP2CA同様にABAにより発現が変化する遺伝子をRNA-seq解析データから探索した。その結果、PP2CAとは異なるグループに属するプロテインホスファターゼ遺伝子の一群がABA処理で顕著に発現上昇することを見出した。この遺伝子をヒメツリガネゴケ細胞で過剰発現させたところ、ABA誘導遺伝子の発現を有意に減少させることがわかった。 研究期間全体を通じて、ARKの調節において、その活性維持機構と、負の制御因子の同定ができたことは大きな成果であると考えている。今後、これら調節因子の制御機構の詳細な解析を行なっていく予定である。
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