2021 Fiscal Year Research-status Report
乾燥地植物における花成因子COおよびFTを介した根系発達促進機構の解明
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20K06687
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
明石 欣也 鳥取大学, 農学部, 教授 (20314544)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 乾燥ストレス / 植物 / 根系 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球上には乾燥ストレスに極度に強い耐性を示す野生植物が存在し、そのストレス耐性を担う分子機構とその多様性の解明が待たれている。野生種スイカの根において、根の伸長促進に正に作用すると示唆されるCLCOL1遺伝子を過剰発現させた毛状根スイカにおけるトランスクリプトームを解析したところ、従来より見いだされていた転写因子群に加え、アミノ酸代謝に関与する因子の発現量が変化することが示され、乾燥地植物の根における環境応答にアミノ酸代謝変動が関わる可能性が示唆された。これまでの野生種スイカのアミノ酸代謝は、地上部における挙動について知られ、特にアルギニン生合成経路のシトルリンを成葉で高蓄積することが判明していたが、地下部における挙動については不明であった。そこで、乾燥ストレス下の地上部において光合成タンパク質等を分解して窒素転流担体であるシトルリンに転換し、地下部へ転流し再分解して成長に必要なアミノ酸を再合成するという、新たな生理現象があり、これに上述の転写因子群が関与する形態形成機構とリンクするという仮説が考えられた。そこで、焼成ケイ素顆粒を担体として根をモニターする栽培実験系において野生種スイカに乾燥ストレスを付与し、その根の伸長促進とアミノ酸代謝の関係について解析した。その結果、乾燥ストレス付与に伴い地上部では、第4葉期という若い段階にもかかわらず開花が顕著に促進され、CO-FT情報伝達系による開花促進機構の作用が示唆された。一方窒素代謝については、ストレス暴露に伴い地上部において老化の促進に伴いシトルリン蓄積が誘導されるのに対し、地下部においては誘導が確認されず、植物体の部位に依存して異なる窒素代謝制御が行われていることが示唆された。これらの結果は、乾燥耐性植物のストレス耐性を担う形態形成制御が、その一次代謝と密接に相関することを示唆するものであり興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乾燥地植物における根系発達分子機構と、一次代謝制御との関係について、また植物体の地上部と地下部をつなげる代謝的要因について、示唆に富むデータを取得することができた。一方、他の植物において同様の生理現象がどの程度起こるのかといった、現象の普遍性の検定については、次年度以降の課題と位置付けられたため、概ね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
乾燥耐性植物におけるストレス誘導型の根系発達機構についてさらに解析を進めるため、乾燥ストレス耐性植物である野生種スイカに加え、乾燥ストレスに対して感受性が高いシロイヌナズナや、他の耐性植物であるジャトロファなどを分析対象として加え、当該分子機構の機能と植物多様性についてさらに探索したく考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度についてもコロナウイルスの国内流行に伴い国内・海外出張に制限が生じ、科研費のみならず他の研究予算における旅費の支出が激減したため、当該予算を消耗品等へ振り替えるなどにより科研費執行額が当初予算より少なく、次年度使用額が生じた。次年度においては、アルバイトをさらに雇用することで研究をさらに促進させる予定であり、執行額が本年度に比べ大幅に増加する見通しである。
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Research Products
(5 results)