2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the conserved mechanism of division plane determination in land plants
Project/Area Number |
20K06693
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
幸節 健 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 特任助教 (20821482)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中心体様構造物 / Auroraキナーゼ / 微小管 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物、植物ともに、細胞がどの方向に分裂するかは、正常な発生に大きな影響を与える。申請者は基部陸上植物ヒメツリガネゴケにおいて細胞分裂面は中心体様構造を起点とした紡錘体軸の決定、細胞質分裂装置であるフラグモプラストの親細胞壁への適切なガイダンスによりなされることを見出した。本研究では、紡錘体軸の決定機構、細胞質分裂装置の親細胞壁へのガイダンス機構を調べることで、分裂面制御機構を解明することを目的とする。 (1)ヒメツリガネゴケを用いて中心体様構造物の形成機構を解析。(2)真核生物に広く保存される細胞分裂に必須なAuroraキナーゼの解析。これらの解析で、紡錘体軸の決定、フラグモプラストの親細胞壁へのガイダンスメカニズムを明らかにすることを試みた。 (1)の研究成果。RNA-seq法で同定済みの初期茎葉体で発現変動する遺伝子の中に、微小管の束化活性を有するMAP65dとMAP65eがあった。これらに蛍光遺伝子を融合することで、その細胞内局在を観察した。MAP65dとMAP65eは、表層微小管、中心体様構造物、フラグモプラスト微小管の赤道面に局在した。この結果から、MAP65dとMAP65eが中心体様構造物の形成に関与していることを考え、MAP65dとMAP65eの二重変異体を作製し、その機能を解析した。しかしながら、二重変異体は野生型と比較して形態に異常は観察されず、細胞分裂面制御をしていないことが示唆された。 (2)の研究成果。Auroraキナーゼの基質を同定するために、Auroraキナーゼにビオチンリガーゼ (BirA)を融合した遺伝子を持つ形質転換株を作製した。この形質転換体からタンパク質を抽出し、ウエスタンブロットによってビオチン化されたタンパク質を検出した。その結果、野生型のビオチン化されているタンパク質以外の分子量のタンパク質は検出されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RNA-seq法で同定済みの初期茎葉体で発現変動する遺伝子の中から細胞骨格の動態に関与する遺伝子をピックアップし、単独変異体、二重変異体と作製したが、中心体様構造物の形成に必要な遺伝子を未だに同定に至っていない。また基質のビオチン化を利用してAuroraキナーゼの基質探索を行ったが、そもそもビオチン化の酵素活性が低く、野生型と比較しても有意にビオチン化されたタンパク質を同定できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
微小管の束化活性を有するMAP65dとMAP65eがあった。しかしながら二重変異体に細胞分裂面の異常は観察されなかった。RNA-seq法で同定済みの初期茎葉体で発現変動する遺伝子の中に、MAP65fがあることから、これら三つの遺伝子が相補的な働きをしていることが示唆される。三重変異体を作製しその表現型を観察する。またRNA-seq法で同定済みの遺伝子の中にはMAP65以外にも細胞骨格である微小管の動態に影響を与える微小管関連因子が複数ある。これら遺伝子のコードするタンパク質の細胞内局在、機能欠損株を作製する予定である。 Auroraキナーゼの基質を同定するために、Auroraキナーゼにビオチンリガーゼ (BirA)を融合した遺伝子を持つ形質転換株を作製した。しかしながら大腸菌由来のビオチンリガーゼが植物体内において、その酵素活性が損なわれていることが推測された。2020年に植物でビオチンリガーゼを用いて基質を同定した論文が複数の研究室から論文として報告された。その論文では、大腸菌のビオチンリガーゼを植物用に改変していた。このビオチンリガーゼを用いて、もう一度、Auroraキナーゼの基質同定を試みる。既にプラスミドを入手しており、現在、形質転換用のプラスミドを作製中である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスによる国際学会、共同研究などに必要な旅費が必要でなかった。本年度は、ビオチン化を利用したAuroraキナーゼの基質同定において、LC/MS/MSを用いた質量分析を行う予定である。これに関しては外注する予定で、その費用に使用する。
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