2022 Fiscal Year Research-status Report
葉緑体核様体の光分散・暗凝集反応の分子機構および生理学的役割の解明
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20K06710
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
岩渕 功誠 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (30583471)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 葉緑体 / 光応答 / 核様体 / 光分散反応 / 暗集合反応 / ゼニゴケ / RNA-Seq / 蛍光寿命イメージング(FLIM) |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は近年,ゼニゴケにおいて,葉緑体核様体が明所で小さなスペックルを複数形成しながら葉緑体全体に分散し(光分散反応),暗所でスペックルの消失とともに葉緑体中央に集まる(暗集合反応)現象を見出した。そこで我々は「光分散・暗集合反応を介して葉緑体遺伝子の発現が調節される」という仮説を立て,これを検証するため,昨年度より1)葉緑体RNA-Seq解析と2)DAPIを用いた蛍光寿命イメージングの解析を行ってきた。 1)RNA-Seq解析 昨年度は明処理および暗処理した個体からそれぞれトータルRNAを抽出し,RNA-Seq解析を実施した。その結果,明所と暗所において異なる遺伝子発現プロファイルが確認された。解析を進めると,明所において光合成に関わるいくつかの遺伝子の発現が変動しており,光分散反応特異的なものが見えてきた。 2)DAPIを用いた蛍光寿命イメージング DAPIがDNAと結合すると,その蛍光寿命に変化が生じる。この性質を利用してDNAの凝縮状態の定量化を試みた。明暗条件下でそれぞれ培養したゼニゴケをDAPI染色した後,蛍光寿命イメージング顕微鏡を用いて,葉緑体DNAに結合したDAPIの平均蛍光寿命を測定した。その結果,平均寿命は明暗条件で有意な差はなかったものの,蛍光強度に顕著な差が認められた。このことから,DAPI近傍のDNAのミクロな環境は明暗条件で大きく変化しないが,DNAの高次構造が変わることが示唆された。以上の知見は,葉緑体遺伝子の発現調節に核様体の光分散反応・暗集合反応を介したDNAの高次構造の変化が関与することを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
蛍光寿命イメージングによるDNA構造変化解析は当初の予定には入っていなかったもので,この解析により重要な知見が得られたものの,かなりの時間を要した。そのため,予め予定していた突然変異体の単離・解析を中断している状態にある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を論文にまとめるために,今年度は既存のデータの補強に集中する。そのため,当初予定していた突然変異体の単離・解析は行わないこととする。
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Causes of Carryover |
本研究の目的をより精緻に達成するために追加実験を行う。また,成果を論文にまとめて投稿する。以上の理由により,予算を次年度に持ち越した。
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