2020 Fiscal Year Research-status Report
チョウの翅組織のリアルタイムイメージング:システム構成的アプローチ
Project/Area Number |
20K06724
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
大瀧 丈二 琉球大学, 理学部, 准教授 (70360211)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 色模様形成 / 翅形成 / チョウ / リアルタイムイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
小型のチョウ(ヤマトシジミ)の蛹の翅を対象として、共焦点顕微鏡を用いて長期蛍光イメージングを行った。翅の周辺部分には未記載の細胞群が発見された。翅周辺組織の最も辺縁の部分はクチクラと接触しているが、時間が経つにつれて翅が縮小し、クチクラから分離する過程が観察された。また、翅の光学切片を観察することで、表面に陥入部位が形成され、そこが翅本体と翅周辺組織の分離部位として働くことがわかった。 翅周辺組織の細胞は徐々に扁平化し、細胞密度が低下していった。それとともに、周辺組織および翅本体は基部に引きつけられるように縮小していったが、その後また多少拡大するという複雑な動きが観察された。しかし、最終的には、周辺組織は翅本体に潜り込むようなかたちで消滅した。その過程でマクロファージのような細胞がみられ、おそらくアポトーシスした細胞を迅速に除去しているものと思われた。 いずれにしても、翅周辺組織はこれまでは単にアポトーシスで消滅するとされていたが、本研究から、単にアポトーシスによって消滅するという単純な過程ではなく、その過程では組織の運動と細胞の形態変化が大きく貢献していることがわかった。また、このような過程は蛹化後80時間程度で完了することがわかった。それ以降は外見からはほどんど変化せず、羽化直前に着色される。 これらの結果は、昆虫の翅の形態形成について、さらには生物の形態形成について考えるうえで大変興味深い事例を提供することができる。今年度の研究は翅の全体の形の形成に物理的な力が関わっていることを示唆するものである。基本的にこれと同じ原理でチョウの色模様形成も行われているのではないかと推察される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ、ほぼ計画通りに進んでいる。共焦点顕微鏡を用いて、翅形成における長期蛍光イメージングを計画通り実施した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの計画に沿って翅全体の張力について知るために、歪み部分の動態観察を実施する。翅に微少な穴を開けることで、翅全体にわたる張力マップを作成する。それと並行して、L17Eと呼ばれる膜透過性ペプチド等を用いて、抗体導入実験を試みたい。
|
Causes of Carryover |
当該年度には研究が計画通りに進行した。どちらかと言えば、むしろ予想よりもスムーズに進行し、失敗も少なかったため、使用額も少なく抑えることができた。特に人件費・謝金については、使用することなく年度が終わってしまい、これが次年度使用額が生じた主な理由となっている。次年度には、合算額を使用し、よりチャレンジングな実験(L17Eと呼ばれる膜透過性ペプチドによる抗体導入)も推進することとする。
|
Research Products
(2 results)