2021 Fiscal Year Research-status Report
In search for genetic factors controlling morphological plasticity of diatom cell wall
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20K06726
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
佐藤 晋也 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (80709163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 和正 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 助教 (20778401)
出井 雅彦 文教大学, 教育学部, 教授 (60143624)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 珪藻 / 形態可塑性 / トランスポゾン / 塩分ストレス / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
珪藻はシリカでできた細胞壁をもつ微細藻類である。その多様な形態がどのような遺伝的因子により決定されているかは明らかでない。2021年度は、培養の塩濃度をコントロールすることで細胞壁の形態変異を誘導できる珪藻Pleurosia laevisを用い、比較トランスクリプトーム解析を行い、珪藻の形態決定に関与する遺伝子の候補を見出すことができた。これらの結果は3回の国際学会での発表および国際誌の論文発表(投稿中)としてまとめられている。また、トランスクリプトームによりfcp遺伝子が常時高発現であることが示されたことから、本遺伝子のプロモーターとターミネーターを用いたPleurosiraトランスフォーム用ベクターを作成した。本種は細胞サイズが大きく、珪藻で従来用いられるバーティクルガンやエレクトロポレーション法による遺伝子導入は困難だが、一方でマイクロインジェクション法は適用可能と考えられた。ただし、2021年度はマイクロインジェクションによりベクターを細胞内に注入することには成功したものの、マーカー遺伝子の発現は確認できなかった。 さらに、全球規模で移入種として急速に分布を拡大している本種において、環境適応に寄与しうるトランスポゾンの発現が既知の珪藻種より顕著にアップレギュレーションされていることが示唆された。トランスポゾンが本種の環境耐性獲得と急速な分布拡大に寄与しているかを検証するため、現在国内とアメリカの異なる環境から得た同種の3株についても新たに同様の解析を行い、株間での比較を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トランスクリプトームデータから常時高発現の遺伝子を見出し、導入ベクターを作成することに成功した。珪藻ではこれまでに前例の無い、マイクロインジェクションによる遺伝子導入を試み、細胞へのダメージを最小限に留めインジェクションする系を確立することができた。本手法では、インジェクション後の生存率が29%と非常に高い。2021年度はベクターの最適化や導入量などの各種条件検討は行っていないため、2022年度は更なる検討を進めることで目的遺伝子の発現がみられることと期待される。 比較トランスクリプトーム解析から、トランスポゾンと本種の急速な分布拡大についての関連が示唆された。研究開始時には予期していなかった結果であるが、近年広く問題になっている生物の移入をゲノムレベルで理解できる可能性もあり、今後も解析を継続する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
珪藻で初のマイクロインジェクションによる形質転換を成功させるため、プロモーターおよびターミネーターの再選択のうえベクターを改めて作成する。またインジェクション時の圧力や導入量の最適化、回復培養の条件検討を行う。これにより、従来は困難とされてきた大型種への遺伝子導入のブレイクスルーとなることが期待される。 また、塩濃度環境の変化によるトランスポゾンの発現様式変化と、分布拡大との関係について更なる理解を進めるため、実験共試株の全ゲノム解読も併せて行い、海水から淡水へと生息域を拡大する中でどのようなゲノムレベルでの変化が起きているのか明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う移動制限のため、分担研究者が予定していた2回のサンプリングを実施することが出来なかった。2022年度に代替となるサンプリングの実施を予定している。
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Research Products
(7 results)