2022 Fiscal Year Research-status Report
Morphology and function of fin-ray joints in fish
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20K06727
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
矢野 十織 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10648091)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 関節 / 形態 / コラーゲン / 膠原線維 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゼブラフィッシュの関節構造と機能を理解する本研究課題において、(1)本年度前半は分子生物学的解析を、(2)後半は組織学的解析を行った。
(1)ゼブラフィッシュの鰭(ひれ)の関節運動と機能を明らかにするためには、コラーゲンや骨芽細胞、破骨細胞など、骨や関節の理解に必須な細胞・細胞外マトリックスの①タンパク質局在を明らかにすること、②遺伝子発現状態の変動を捉えることが必須であった。そこで申請時の計画通りに複数の抗体を購入し①について免疫組織化学染色を検討した。多くのコマーシャルな抗体において非特異的な染色結果が散見され、既報の遺伝子組換え系統(骨芽細胞やコラーゲンを蛍光タンパク質で可視化したゼブラフィッシュ)での結果と乖離していた。購入した抗体は他動物(マウス)の組織・細胞においては特異性があることから、ゼブラフィッシュにおいて①の困難さがうかがえた。一方でリアルタイムPCR法を用いた②に関しては計画通りの成果が得られた。
(2)骨は骨質(コラーゲン)が一成分であり、同じくコラーゲンで作られた骨膜・関節・周囲結合組織との連続性を明らかにするには、骨化コラーゲン線維・非骨化コラーゲン線維の双方を二別して染める技術が本研究課題で必須だった。しかし組織・病理染色(アザン染色・マッソントリクローム染色・シリウスレッド染色)では双方が単色に染まってしまう。我々は同一サンプルで双方を別な色に標識する新規二重染色法を考案し、本年度の日本解剖学会年会にて世界初公表した。本研究課題の実施期間半ばにして想定外の成果・進捗であると考えられ、教育・研究・病理の観点で興味ある方々に今後広く技術提供し、結合組織解析の研究分野に貢献したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関節の構造と機能の両面を明らかにする本研究において、構造を「粗く」明らかにする新規染色技術を考案したことにより、当初の計画以上の進展・成果があり、早々に次年度での論文公表を計画している。一方でsingle-cell RNA-seq解析やtranscriptome解析のような「細かく」性質を明らかにする網羅的分子解析も本研究課題遂行の両輪のひとつであるが、セットアップが遅れている。また機能面に関しては挑戦的な実験計画であるが、昨年度までに購入したハイスピードカメラを用いた機能解析は難航している。全体を通じて本研究課題の進捗はおおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
組織構造を粗く解析するための「骨化コラーゲン線維・非骨化コラーゲン線維の二重染色技術」に関しては、本研究課題遂行のなかで研究代表者・矢野が発案をし、研究グループ内で改良を重ねたオリジナルの手法であるため、プライオリティは実験ノート記録ならびに本年度の学会発表にて自明であるが、論文としてプライオリティを高めることが一般的に必要である。本邦発の技術として論文公表し、長く引用してもらえるよう、技術の微調整をしたうえで次年度内に公表を目指したい。このためには、組織構造を細かく解析するための網羅的分子解析は、実施年度を後ろ倒しにしたうえで計画通りに行うことにする。
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Causes of Carryover |
研究計画の申請当初は、組織構造の性質を細かく・網羅的に分子解析する実験系を研究実施期間の前半で行う予定であった。これは国内外における研究の流行りであり、科研費使用による最先端の研究遂行の必然ともいえる。しかし本年度考案した新規染色技術は、古典的手技とはいえ本邦発信の基盤的新技術として永年の被引用が期待できるものであり、優先度は高い。したがって、柔軟かつ計画的に使用することが可能な基金化科研費の利点を有効活用すべく、研究実施期間の後半に網羅的分子解析をする計画とし、そのために次年度使用額とした。申請当初よりこれを予見して、2022年度(本年度)・2023年度(次年度)に請求する助成金額は必要最小限なものとなっており、税金による公費の合理的な使用を立案済みである。 また実施期間前半に購入予定であった設備備品1点に関しては、半導体部品の世界的な不足により、当初予定を大幅に上回る価格高騰がおきているため、現時点では購入不可能を想定しており、低価格な代替手法によって予定された研究計画を遂行する予定である。
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Research Products
(4 results)