2021 Fiscal Year Research-status Report
花粉形成過程における新規のオルガネラ授受・分解システムの解析
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20K06728
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
永田 典子 日本女子大学, 理学部, 教授 (40311352)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 花粉 / TEM / SEM / オルガネラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、花粉形成過程において細胞間オルガネラ授受・分解という現象が実在することと、この現象が精細胞と栄養細胞それぞれの液胞によって協調的にもたらされるという仮説を検証することを目的とする。この目的のために、従来型のTEM法に加え、広域SEM法及び連続切片SEM法を用いて、花粉形成過程を通じた詳細な広域・三次元画像を取得した。また、従来の化学固定に比べ、膜の歪みなどが少なく真の姿を捉えるのに適していると言われる凍結固定法も取り入れた。過去には葯や花粉の凍結固定はあまりうまくいかないことが多かったが、今回は充填剤や固定剤の工夫により、凍結でも良好な固定像を得ることに成功した。これにより、野生型シロイヌナズナにおける花粉形成過程における良好なオルガネラ像の取得が可能となり、研究を進める上で基盤となる手法を確立することができたといえる。 次に予定した研究法としては、突然変異体の網羅的な観察により、細胞間オルガネラ授受・分解に関わる因子を探るというものである。今年度は、花粉形成に関わる幅広い突然変異体の利用を試みた。複雑な花粉形成過程においては、葯タペータム細胞からのオルガネラ及びその内容物が、どのように遠く離れた別細胞である花粉側に授受されるかも興味深いところである。幾つかの変異体では野生型とオルガネラ授受の様子が異なっていることが判明した。細胞間オルガネラ授受のメカニズム解明に迫るものとなる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、当初の予定通り、広域SEM法と連続切片SEM法を用いて、花粉形成過程を通じた広域・三次元画像を取得することができた。また、今年度は特に、難しいとされてきた葯・花粉での凍結固定像も得ることができ、基盤的な技術は確立できたものといえる。 また、突然変異体を用いた解析にも着手することができた。葯から花粉表面へのオルガネラやその内容物の授受に関しても、細胞間オルガネラ授受に関連した興味深い現象といえる。cyp704b1変異体においては、明瞭なエキシン形成異常と共に、正常なポーレンコート形成が確認された。これは、エキシン形成とポーレンコート形成が別の制御から成ることを示すものでもあり、このたび論文にて報告することができた。また私は以前に、ステロール生合成上流域のステップであるHMG-CoAレダクターゼ(HMGR)の変異体で、タペータム内の色素体異常と花粉のポーレンコート異常を報告した。そこで今回は、HMGRのタンパク質蓄積量と活性に対して抑制的に機能するHISE1変異体や、この変異体にステロールアシル化酵素の変異体を掛け合わせて作成されたフリーステロールを過剰に蓄積する変異体を用いての解析も進めた。種々の興味深い結果も得られつつあり、進捗状況としては概ね当初の予定通りであるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、花粉形成過程にみられる精細胞から栄養細胞へのオルガネラ授受・分解という新しいオルガネラ制御機構に着目して研究をスタートした。広域SEM法や連続切片SEM法を用いた広域・三次元画像により、この現象については概ね全体像を捉えることができたと考えている。次の研究ステップとしては、突然変異体の網羅的な観察により、細胞間オルガネラ授受・分解に関わる因子を探るというものである。この際、オートファジー不全変異体などだけを対象とすると行き詰まる可能性が高いと感じ、花粉形成に関わる幅広い突然変異体を利用することにした。その際、葯タペータム細胞からのオルガネラ及びその内容物が、どのように遠く離れた別細胞である花粉側に授受されるか、といった観点も含めることにした。このように、広い意味で細胞間でのオルガネラ授受・分解を捉えることにしたため、花粉形成とオルガネラとの関係性において、より多くの新しい知見を得ることが可能になると考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、予定していた学会参加を取りやめたため、旅費の執行がなかった。また同じ理由で、臨時勤務者の雇用が遅れ、人件費とそれに伴う物品費の使用が少なくなった。感染症の拡大状況にもよるが、今年度は順調に使用できるものと見込んでいる。
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Research Products
(5 results)